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舞台、俳優DD、サブカルかぶれ等

「烈車戦隊トッキュウジャー」で学ぶデカルトの実体二元論

 こんにちは。いきなりですが、烈車戦隊トッキュウジャーは端的に言って精神と肉体が分離している話です。何を言っているんだという感じの方もいると思うので、だらだら持論を説明します。

 興味のある方はなにとぞお付き合いくださいませ。

 

 そもそも烈車戦隊トッキュウジャーは「メイン5人が実は全員10歳」という、みんな薄々気づいていたのにいざ本当にそうだとネタバレされると本当にしんどい展開を抱えた話だったのですが、そうなってくると重要な問題として本人たちの精神と肉体には矛盾が生じていることになります。本人たちの肉体は18~19歳前後のもの*1と仮定すると、精神の経てきた年数と8~9年の差が生じることになるのです。

 小林靖子氏は明確に語っていませんが、この事実が示すのは大人トッキュウジャーの肉体は「入れ物」でしかないのではないか、という可能性です。荒唐無稽かもしれませんが、子供トッキュウジャーがレインボーラインの科学力で大人トッキュウジャーに「変えられていた」というわけではなく、実は子供トッキュウジャーの肉体は異空間に飛ばされて凍結された状態で別に大人トッキュウジャーの肉体が用意されており、その肉体に魂だけが移されて戦っている、という可能性もあるわけです。

 つまり「精神の移動」というかなりサイケな作業が行われていた可能性もある、ということになります。

 昴が浜にいた「ライトたち」と、烈車で旅をしている「ライトたち」の肉体が"本当に同一なのか"については作中で一切描写されていません。関連作を含む劇中で「大人の状態」と「子供の状態」の往復が描写されているシーンは以下の3つです。

  1. 第32駅 - 鏡に映った姿が子供の状態だったシーン*2
  2. 最終駅 - 大人の状態だったが家族と再会し、大人の状態でも本人たちであるということを認められたことによって子供に戻るシーン
  3. 「VSキョウリュウジャー」映画 - クロックシャドーの放つ怪電波によって子供の状態になってしまう

 概ね共通するのは、そりゃそうだって感じなんですが「自分の意志では大人と子供を往復できない」という点です。

 実体二元論とは、端的に言ってしまえば「この世界には『肉体』と「魂」が別々に存在する」という思考法です。つまり、一般における科学的には脳の機能が停止すれば意識も停止する、と考えられていますがでもそれを超越したなんかがあるだろう、と無垢に信じる考え方のことなのです。

 現在の科学分野においてこの考え方は全く支持されておらず、「脳=意識=人格」という一元論の考え方が一般的になっていますが、今回は真剣にこの実体二元論を信じるという前提で話を進めようと思います。小林靖子がそう書いてるんだから仕方ないじゃん。

 1.のシーンからそもそも哲学的疑問を呈してしまいますが、なぜ鏡に映った姿は違う人間なのに同じ人間だと確信できるのでしょうか?自分だからと言ってしまえばそれまでですが、解析をもって少し思考を巡らせてみたいと思います。

 

レインボーライン総裁は創造主なのか

 そもそもトッキュウジャーである本人たちは、記憶を取り戻して以降は「自分たちの本当の姿が子供である」という認識をしています。つまり現在の肉体は偽だという考えを5人が共有しているのです。

 鏡に映る自分が子供の姿であるという場面に際して、「姿は違うのに同じ思考を共有している」という状況が生まれます。つまり1つの精神に2つの肉体が与えられているという現実を受け入れると、人間のごく自然な反応として「どちらの肉体が真のものなのか」という選択をします。このプロセスにおいて、トッキュウジャーの5人は自分たちの記憶が戻ったことを理由に「子供の肉体が真」「大人の肉体は偽」というラベリングを行ったのです。

 先ほどの「なぜ鏡に映った姿は違う人間なのに同じ人間だと確信できるのか?」という命題については、「そういう記憶があるから」としか言いようがないのが烈車戦隊トッキュウジャーという作品です。これこそが実体二元論を示しています。記憶がひとつの脳に依存しないという概念はよくあるようで斬新です。

 第32駅から最終駅までのトッキュウジャー5人は「大人の肉体と子供の肉体が同じ意識を共有している」と言えるでしょう。

「烈車戦隊トッキュウジャー ファイナルライブツアー2015」脚本内でも描写された「車掌(レインボーライン総裁)の一存によって大人に戻れる」という事実は、恐らく総裁が魂の移動管理を行っているのではないか、という事実に直結します。ここで重要になってくるのは、一元論の場合はこのようなことはあり得ない、ということです。「違う肉体を同一の意識が行き来する」作品(らんま1/2魔法少女まどか☆マギカなど)全般に言えることですが、二元論を下敷きにした世界観でないと成立することは決してありません。

 

 実体二元論を掲げる代表的な団体としてはヒンドゥー教が挙げられます。輪廻や解脱といった概念は日本の仏教にも大きな影響を与えており、日本人が実体二元論系のエンタメを作り、そして受け入れがちな傾向にあるのも恐らく仏教を経由したヒンドゥー教要素のせいであるといえるでしょう。

 死を経ても同じ意識が来世へと運ばれる、という日本人の何割かが持っている考えはまさしくヒンドゥー教のものです。そもそも魂を「受け継がれる」であるとか「動かせる」という考えが東洋的な概念なので、あまり西洋にはありません。死んだらそれでおしまいです。

 劇中では「シャドータウンになった街は時間が止まる」という描写がありますが、その設定に倣うのであれば「トッキュウジャー」劇中の1年という時間は昴が浜において流れていないことになります。つまり5人は年を取っておらず、精神的な1年分の成長はしていても、肉体の成長はしていないのではないか、という立場を取らざるを得ません。

 いまいち作中でその辺りの流れが描写されていませんが、トッキュウジャーの5人が烈車で過ごしていた1年間は実は昴が浜では1秒にも満たない時間だったという可能性があります。5億年ボタンみたいに全部忘れていないだけマシですが……。

 肉体は成長していないが、精神は成長している。この矛盾はまさしく二元論でしかあり得ません。

 ちなみに全然関係ないのですが、Vシネマでは「トッキュウジャーだった記憶は5人で共有しているものの昴が浜では時間が流れておらず本当にあった出来事なのかわからないので、成長するうちに子供にありがちな集団妄想として処理するようになりトッキュウジャーだったことに半信半疑になる」という展開を期待していたのですが全然違いました。急に石油王との結婚とかが決まったら全額予算をポケットマネーで出してその話作りたいです。

 トッキュウジャー5人も一般市民であればシャドーライン侵攻によってある意味「死んでいた」ところ、(それはチケットくんの発した「お前たちは死んでいるも同然」という言葉に明瞭です)レインボーラインに選ばれ、魂を大人の器に移すことによって歪んだ時空の中で「生き返った」のです。なかなかサイバーパンク

 恐らくですが、トッキュウジャー5人の「大人の身体の入れ物」はレインボーライン総裁によって創造されたものでしょう。魂だけが先にあり、身体はあとから存在する、という考え方はものすごく宗教哲学っぽいです。「闇にのまれた記憶」は要するに臨死体験なので、「一度死んだ気がするけどでも今とりあえず生きてる」という状況に疑問を持たないのはそういうことなのでしょう*3

 

ヒカリくんは本当にヒカリくんなのか

 私の信じていた野々村洸(大人の姿)は野々村洸(子供)が臨死体験を経てレインボーライン総裁の科学力により分離された野々村洸の魂を入れた「容器」でしかない、という結論に自分で達してしまった私は少しショックを受けています。私は真剣に容器に恋していたし、横浜流星くんも容器を演じていたのではないかという話になってきてしまいます。

 これでは野々村洸くん(大人)の実存は完全にレインボーライン総裁の手に委ねられているということになってしまうのです。そう考えてみると、トッキュウジャーの5人(大人)はある意味で戦闘用サイボーグです。超かっこいい(?)。戦闘のために作られ、戦闘用としての寿命が近づくと魂を抜き取り子供に戻すよと言い渡されるのです。しかも代用可能という言及が作中で堂々となされている(!)。こんなにサイケな戦隊番組が近年にあったでしょうか*4

 せっかく愛した野々村洸くんがサイボーグだったという事実に直面した私はできることなら今すぐレインボーライン総裁に殴りかかりたいですが、総裁が創造したことによる野々村洸くんなのでなんともいえないのが悔しいです。野々村洸くんがもっと健全な目的できちんとした人間としてこの世に存在してほしかった。そう考えるとあんなにつまらなかったVシネマも「真っ当に成長した肉体としての野々村洸くん(大人)」という観点で見ればとても良い話ですね! ありがとう荒川監督! ありがとう小林靖子! ありがとう東映~~~~~!!!!!

 

 来年のVSが楽しみです。

*1:なんの根拠もありません

*2:同回にて「大人ライトと子供ライトがハイタッチをする」シーンがありますが、特に伏線ではなかったっぽく精神世界的描写のようなのでここには含めません

*3:疑問を持ってないわけじゃないと思うけど、本人たちは至って明るく暮らしてるので

*4:と書きましたがキョウリュウジャー以外見てないのでわかりません。サイボーグ系戦隊番組が他にもあったら教えて下さい、すみません