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I READ THE NEWS TODAY, OH BOY

舞台、俳優DD、サブカルかぶれ等

戦隊俳優はなぜ"売れない"と言われてしまうのかについて考えた

 Google検索に「戦隊 俳優」と打ち込むと、4番目に「売れない」という候補が表示される。「戦隊に出た俳優はその後大きな仕事がなくて消える」という言説はけっこう世の中に浸透しているらしく、確かに戦隊出身でテレビに出まくっている俳優と言われてすぐに思い浮かぶのは、ここ最近だと松坂桃李侍戦隊シンケンジャー/2008)、千葉雄大天装戦隊ゴセイジャー/2010)くらいではないだろうか。

 戦隊出身俳優は仮面ライダー出身俳優と比較されがちであることもこの説を後押ししている。水嶋ヒロ仮面ライダーカブト/2006)、佐藤健仮面ライダー電王/2008)、菅田将暉仮面ライダーW/2009)、福士蒼汰仮面ライダーフォーゼ/2011)など、一般人でもパッと顔が思い浮かぶイケメン俳優というベクトルで語るに充分なキャスト陣を輩出している仮面ライダーシリーズに比べれば、毎作コンスタントに2~5人のイケメンが出演していながら大部分はその後地上波でほとんどその姿を目にすることがない戦隊出身俳優は「売れない」と一般人にdisられてしまうのも頷ける。出てる人数が多いからしょうがないんだよと思うものの、やっぱり比較すると仮面ライダーシリーズに出ている俳優のほうが一般への知名度を上げている傾向にあるという感は否めない。

 

 スーパー戦隊シリーズ仮面ライダーシリーズの大きな特徴は、一作品あたりに対する視聴者の数が大きく変化することがないというものである。近年の少子化でゆるやかにその市場は縮小しているものの、去年は100万人見ていたけど今年は10万人しか見ていないみたいなことがほぼ有り得ない優良市場だ。そしてスーパー戦隊シリーズ仮面ライダーシリーズの視聴者層はほぼ一定であり、大抵の子供も親も大きなお友達も2作を通しで視聴している。

 つまり、両者の間に純粋な視聴者数の格差はほぼ存在しないのではないだろうかという仮説に至ることができる。戦隊しか見ないとかライダーしか見ないとかそういう大きなお友達の意見はこの場合聞いてない。であるならば、なぜ双方に出演している俳優間で"売れる/売れない"の確率差が発生するのだろうか?

 まず第一に、オーディションの段階での倍率が根本的に違うのではないだろうか。敵役、脇役も含めてしまうと作品間での差が激しいため、単純に「作中で変身できる人」(男性)という視点で、最新作品である「仮面ライダードライブ」と「手裏剣戦隊ニンニンジャー」を比較してみる。*1

 仮面ライダードライブ→竹内涼真/稲葉友/上遠野太洸 計3名

 手裏剣戦隊ニンニンジャー→西川俊介/松本岳/中村嘉惟人/多和田秀弥 計4名

 

 あんまり変わらなかった!!!!!!どうしよう!!!!!!! っていうか、冷静に考えてみると仮面ライダーも2号3号以降のライダーを含めると毎年コンスタントに3~人はイケメン出てるじゃないですか。局地的に1号ライダーだけが売れることは事実だが、その反面戦隊レッドはそんなに売れないという不可解な現象が発生していることが判明した。うーん、なんでなんだろう…。

 ガワ人気や放映期間中の俳優人気でいえば、子供たちの間にも大きなお友達の間にも、1号ライダー/1号ライダー俳優とそれ以外にそこまでの人気格差が発生しているという実感はあまりない。少なくとも私の周りではマッハとチェイスは宗教的な人気を誇っているし、鎧武のときも小林豊さんのファンが場の雰囲気を完全に握っていたように感じた。何が言いたいかというと、特撮視聴者への人気とその後売れるかどうかは全く比例しないということを言いたいのである、わたしは。いくら特撮でちやほやされていたとしても、外の世界には特撮の世界でのちやほやされ度合いは通用しないのである。

 じゃあなぜ戦隊俳優は売れないのか?(話が冒頭に戻った)

 

 ここからは完全にわたしの私見になるので、あまりたいした根拠はないけれど、ひとりの戦隊俳優を追いかけ続けて至った結論だ。

 スーパー戦隊俳優はとにかくイベントが多い。ライダー俳優でもただでさえ多いと思うのに、その4倍近くはある。冗談とかではない。

 仮面ライダーに推しが出演することになった、と仮定してほしい。個人のカレンダー・写真集・ファンミーティング等を完全に除外すると、あなたの行かなければいけない現場は以下になる。(現場数の例は「仮面ライダードライブ」を参考にした)

 

・①12月に公開される前作仮面ライダーとのクロスオーバー映画関連(完成披露試写会1回、公開舞台挨拶が関東で6回、関西で6回程度)

・②1月に開催される東映特撮全体のイベント超英雄祭(2日間)

・3月に公開されるスーパーヒーロー大戦シリーズ映画関連(完成披露試写会1回、初日舞台挨拶4回)

・③5月に新高輪プリンスホテルで開催されるイベント(2日間)

・7月に公開されるスーパー戦隊との合同映画関連(完成披露試写会1回、公開舞台挨拶が関東で6回、関西中部で6回程度、熊本・和歌山・京都でのトークショー各会場2回程度、大ヒット御礼舞台挨拶1回、テレ朝での宣伝イベント*2

・10月に大阪で3公演、東京で6公演行われる番組フィナーレイベント

①にもう一度出る。また、出演俳優に歌を作ってもらえれば②にももう一度出る。さらに番組自体に人気が出ると、卒業企画と称して同じキャストで別の作品を作ったりする(TOEI HERO NEXT)のでその舞台挨拶に行き、「外伝」と称して番外編DVDが出たりするのでそのイベントを③の時期にもう一度やったりし、てんやわんやになる。

 

 以上である。ややこしいので純粋に放映開始~ファイナルステージで現場数を計算すると*355現場ある。これはかなりの重労働なのではないだろう。

 一方、スーパー戦隊俳優はどれくらいの量のイベントに出演するのだろうか。ざっと1年間の彼らのスケジュールを書き起こしてみよう。(「烈車戦隊トッキュウジャー」参考)

 

・1月:新戦隊プレミア発表会と称してイベントにてお披露目(2日で11公演)

・2~7月:ひたすら栃木や群馬の山中と撮影所を5時起きで往復。

・7月~8月:夏映画公開(完成披露試写会1回、公開舞台挨拶関西6回、関東6回、テレ朝でのイベント計4回、大分でのトークショー2回、大ヒット御礼舞台挨拶九州1回、関西3回、名古屋1回)

・10月~12月:撮影クライマックスと平行して週末に1日6公演、9時30分~17時30分頃までヒーローショー出演(計8日間48公演)

・1月:本編がクランクアップするや否や鬼のようにイベントをこなす。前年戦隊とのクロスオーバー映画もこの時期に公開(お正月舞台挨拶4回、名古屋でのイベント3回、映画完成披露試写会1回、公開舞台挨拶3回、超英雄祭2回、新戦隊プレミア発表会ゲスト出演11回)

・2月中旬:本編の放映終了。世間の人々の記憶から忘れ去られる。

・1月下旬~3月上旬:土日祝は全部丸1日ヒーローショー(計15日間90公演)

・3月中旬~4月下旬:ヒーローショーの千秋楽5日後に全国ツアー初日。土日をほぼ全て使い地方巡業(計10日間29公演)

・5月:番外編DVDのイベント(計2回)

 

 なんと全てのイベントを積み重ねると、計228回になる。めっちゃ戦隊の面々働いてんなという感想になってしまうが、ここで私が一番言いたいのは合計イベント回数の多さと俳優のこき使いっぷりに関してではない。クランクアップしてからイベントに出しまくるという戦隊俳優の使い方についてだ。

 仮面ライダーのキャスト陣は、クランクアップ後のイベントがフィナーレを飾るイベントであるファイナルステージしか目立ったものがない。つまり、本人がクランクアップした段階でスケジュールが空くため、バラエティ、ドラマなどへの積極的露出が可能なのである。というわけで番組が終了したくらいの頃合いにバラエティなどに出まくってお茶の間に対してアピールしていくことが可能になる。これこそが「仮面ライダー俳優はライダー終わっても消えてない」という世間のイメージの原因なのではないだろうかという仮説をわたしはここに提唱したい。みんなが仮面ライダーに出ていたことを覚えているうちに仮面ライダーではない番組で俳優を目にすることが常々行われているからだ。

 しかしスーパー戦隊のキャスト陣は、クランクアップすると速攻ヒーローショーに出まくり、地方のホールでトークショーを毎週やらなくてはならない。当然ながらまとまった量の仕事を受けることはよほど事務所がスケジューリング能力に秀でていないと困難を極める。番組の終了は2月であるにも関わらず、本人たちがフィナーレイベントを行うのは4月末だ。これはどういうことかというと、土日に東京で自由に仕事をできる頃になっていると世間の人たちは既に彼らの「戦隊俳優」ブランドに興味を失っている。次の戦隊がもう10話くらいまで進んでいるからだ。

 一般人に効果的な訴求をするのであれば、みんなが戦隊俳優であることを覚えているうちにテレビに出まくるということが必要とされている。しかし皮肉なことに、それを阻害しているのは他でもない戦隊というコンテンツ自身なのだ。

 志尊淳くんのように正月から1日も休みがありませんという状態で働き続ければ平行して映画を撮影する*4ことも可能であるが、それを全員が行うのはあまりに現実的でない。若手俳優として売れるためにはそれくらいのポテンシャルが必要だと言われてしまえばそれまでだが、あまりにも用意されている環境が過酷すぎやしないだろうか。

 端的に訴える。番組終了直後、一般人の記憶に残っているゴリ押し可能な大切な時期をヒーローショーと地方巡業に費やしてしまうというスーパー戦隊特有の重大な欠陥が原因の根本にあるのではないかという問題をわたしはここに提唱したい。毎週末小さなお友達とヲタクの前に立ち続け、カメラの前からワンクールものあいだフェードアウトしてしまう、そのことが彼らの将来を潰しているのではないだろうか。

 

戦隊俳優って戦隊が終わるとテレビ出なくなるよね。

 という、いつかどこかで聞いたことある言葉の原因は他でもない戦隊自身にある気がする。確かにテレビには出ている場合もあるけど、イベントラッシュが終わってまたコンスタントにバラエティに出る頃にはみんなもう戦隊だったことを忘れているからだ。

 別にヒーローショーをやるなとも、地方巡業をやるなとも言わないけれど、仮面ライダーと比較してどうして戦隊俳優は消えがちなのかを考えたときに、ふたつの間にある格差がこれくらいしか思い浮かばない。(東映内部のことは知らないからもしかしたら奇怪な大人のパワーが作用しているのかもしれない)

 俳優さんは大切に使ってね。

*1:鎧武とトッキュウジャーにしようかと一瞬思ったけど鎧武はキャストが多すぎる……。それに鎧武は既に舞台で長いキャリアを積んでおりこれから地上波に転向することを考えているのかが不明なキャストさんもいたのでやめました

*2:各キャストによって登壇回数が異なるが、主演の竹内涼真くんの場合は4回

*3:ライダー追ってたわけではないので正直自信ないです。すみません

*4:映画「先輩と彼女」はシアターGロッソ公演と平行して撮影を行っていた。彼は超人である