※内容のない記事です
これ読んだ。おもしろかった。
もともとジャニオタを経て俳優厨になったが、今も昔もおたくは鍵垢というものを持っている。(持っていない菩薩のようなおたくもいる)おたくの持つアカウントを分類すると、おおむね以下のようにカテゴライズすることができる。
・公開垢 - 鍵をかけず、世間一般のどのようなオタクに読まれても差し支えないことをつぶやくアカウント。
・本垢 - もっとも使用頻度が高く、メインとして使用しているアカウント。
・リプ垢 - (これはジャニオタには見られない現象である)推しや推しの関係者がツイッターをやっている場合に、リプライを飛ばすためだけに作られたアカウント。ホーム欄が「@推し」で埋め尽くされていることが多い。
・取引垢 - チケットやグッズの取引をするために作られたアカウント。
・レポ垢 - 舞台やイベントなど、ネタバレを含む内容をレポートするために作られたアカウント。
・鍵垢 - ただ単に鍵のついているアカウントを指す場合もあれば、いわゆる「裏垢」と同義の意味で使うこともある。
・裏垢 - 最近は裏垢という言い方をするオタクは少ない気がする。「身内垢」とよぶこともある。身内以外の人間に知れ渡ると倫理的にまずい内容などが書いてある。
・病み垢 - 鍵垢の上位互換であり、鍵垢の中でもことさらに病んだ内容のみが書き連ねられているもの。
2011年ごろまで、一般的にiPhoneなどのスマートフォンが普及するようになる前は当然みんなTwitterもPCかガラケーでやっていたので、クライアントに標準で複数アカウント切り替え機能が実装されておらず(一部クライアントを使えば可能であったがそのような知識は一般的ではなく、複垢を頻繁に行き来して使いこなすのはごく一部のおたくに限られていた)みんながみんな鍵垢を持ちTwitterを複数アカウントで運用しているというわけではなかった。
しかしスマートフォン普及後、標準クライアントであるTwitter for iPhoneやTwitter for Androidで複数アカウントのログインが可能になったことによりおたくは急速に複数のアカウントを使いこなすように進化していく。ヘッダー機能が実装されたことにより「ヘッダーに意味深な画像を設定して他のおたくを威圧する」という行為がおたくの間で流行し、とにかくおたくはSNSの進化にそって新しい武器を手に入れ他のおたくとの冷戦を高度化させていくことになった。
その中で鍵垢にみられる特異性とは、「ツイート内容はみられないがプロフィールはみられる」ということ、また狭い俳優おたく界においては「誰とつながっているかでおおよそ誰なのかの見当をつけることが(場合によっては)可能である」という点にあるのではないかとわたしは思う。本人とつながっておらずとも、誰と会話しているか、どんな会話なのか、会話相手のアカウントが何らかの手段によって見られればそこから推測可能であるからだ。
そのような危ういパワーバランスの中で、俳優厨はみな今日も鍵垢に世間的に知れ渡ったらまずい内容を書き連ねていく。鍵垢には、「いつ崩壊するかわからない」という砂糖菓子のような繊細さが秘められている。
ところでおたくの鍵垢のプロフィールには、今も昔も意味深なことが書かれている場合が多い。その意味深さで同厨を思い悩ませたり、あるいは撹乱したり、またそこまで深い意味はなかったりといろいろな場合があるが、そのポエム性には目を見張るものがあると思う。
名前は伏せ、サンプルとして抽出したいくつかの例を参考にしながら俳優厨の鍵垢ポエムに見られる味わいについて考えたい。
率直系
・「現場の感想とか書くだけだよ(^o^)/」
・「ゆる~い○○くんのおたく*」
・「○○くんを応援してるだけなのでなにもありません」
プロフィールで潔く推しや身分、アカウントの作成目的を明かしている場合もある。他のおたくが見ても胸の中がギスギスしないという点で良いが、必ずしもプロフィールに書いてあることが本当とは限らないというおたくの警戒心を裏からくすぐってくるという点で実はもっとも計算高いかもしれないといえるのではないか。
歌詞系
・「僕が死ねばいいと願った奴は1人残らずいつか必ず死ぬだろう」(大森靖子 / TOKYO BLACK HOLE)
・「きみの頑張りをぜんぶ抱きしめてあげる力がほしいよ」(大森靖子 / ロックンロールパラダイス)
・「ポップでハッピーなふたり」(Hey!Say!JUMP / Chau#)
驚異の大森靖子率。なぜかやたらと大森靖子の歌詞を目にした。その他はほとんどジャニーズの歌詞であるのもまた意外だった。ジャニーズでない残りのごく少数もほとんどアイドル(EBiDANとか、乃木坂とか)。
シンプル系
・「しね」
・「だるい」
プロフィールから厭世感が伝わってくる。このようなことを書いている人は意外と多かった。
沸いてる系
・「世界でいちばん好きなきみ!」
・「『内緒だよ?』」
・「なんでそんなにネガティブなの?(笑)」
・「毎日だ~いすき⤴⤴」
沸いてるというよりも、プロフィールで推しと会話している場合が多い。推しに言われた言葉(っぽく見えるが本当のところそうなのかわからない)や推しへのメッセージを書くことで、そのアカウントをのぞいている他のおたくに効果的にダメージを加えることができる。発明である。
皮肉系
・「炎上した人が好きです」
・「俳優はリストカット」
・「嫌われてるけど他人に嫌われてるって言われるのは嫌いです」
・「あなたのいちばんは私じゃない」
どちらかといえば前述した「病み垢」に分類されるものだと類推されるが、プロフィールですでに病んでいるオタクは多い。
何も書かない
この記事を書くにあたって200近くの鍵垢のプロフィールを見たが、また意外にも全体の1/10にあたる20アカウント近くがプロフィール欄を空白にしていた。本当に誰の鍵垢であるかを隠さなければいけない場合には、結局のところこれが一番いいのではないかと思う。
いろいろなおたくの鍵垢を見てみたが、共通点も、傾向も特に見いだせなかった。みんな好きなことを書いて、好き勝手に変なヘッダーやアイコンにして、好き勝手な名前にしていた。
画一性があまりにもなかったのでちょっとがっかりしたが、やっぱりプロフィールには大事なことは何も書いていないし、見ていても特に楽しくないことはわかった。しかし、やっぱり「秘密」というのはわくわくする。
おたくの鍵垢に書いてあるのは「おたく的に」大事なことなので、社会的に流出しても特に問題のないことが多い。(問題である場合ももちろん多きにわたってある)中身がなくても外側が強固にまもられているだけで中身を想像してわくわくできるのは、やっぱりそのあたりおたくの良いところだと思う。