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I READ THE NEWS TODAY, OH BOY

舞台、俳優DD、サブカルかぶれ等

知っていた人の逮捕について考える

カルチャー

 元バイト先の店長が逮捕されていた。1年くらい勤めていたところだったので、わたしはニュースを見て「あー」と言った。もともと歩く違法みたいな店長だったので(ドラッグはやってなかった。が、酒乱ではあった)いつ逮捕されるんだろうとは常日頃から思っていた。既にその職場は辞めたあとであり、わたし自身に違法性はなくなっていたので感想は「あー」に留まった。

 ちょっとセーフなのかアウトなのかわからないのでいろいろなことを明記はしないが、気になる人は適当に検索してみてほしい。(もっともこのようなことをブログに書けるのは既にわたしが辞めているからである。)わたしをライターとして雇いたいと言ってくるR18サイト運営者の謎お兄さんとか、高級なご飯をおごってくれる不審な社長などに頻繁に出くわす面白い職場だった。(もちろんその他にはつまらない大勢の普通の人たちの影もある。忘れただけで) 闇JKビジネスの取材のためにやってきて、その後もときどき近況報告をしていた朝日新聞の記者の人からLINEが来ていたのでわたしは「あー」とまた言った。

 逮捕されたね、という簡潔な状況報告のようなものだったので、「知っていましたが、しかしストックホルム症候群的でお恥ずかしくはあるものの、わたしは彼にお世話になったこともまた事実なのでそういう点でさみしいです」と返した。しばらくして、「彼自身の淫行によって逮捕されたので、経営していた店に関しては立件することはできなかったようだ」というあっさりした状況報告がまた返ってきた。わたしは、妻子持ちなのに未成年に手を出すのはよくないよなぁという単純な感想しか持っていなかったし、どちらかといえばいっそのこと店も立件されてしまえばいいのになぁと考えていたので「そうみたいですね」と送った。

 「また記事はお書きになるんですか」と聞いたところ、「逮捕事案なので、逮捕事実だけ淡々と書くことになると思う」とだけ返ってきた。

 店長とは特に親しい仲ではなかったが、かといって険悪というわけでもなく、ごく普通に接していたので、やっぱりニュースを見ても「あー」という感想しか出てこないのが悲しかった。店長はいろいろと倫理的に問題ある発想で店を経営していたのでこのような事態になってしまったのだと思われるが、焼き鳥パーティーを開催したり(聖地巡礼に行く、という勇者の人がいれば、是非下の焼き鳥屋さんに行ってほしいと思う。おいしいから)、お店の女の子たちにハーゲンダッツを振る舞ったり、事務所の部屋を暗くして真夏にみんなで怖いテレビを見たりと、内部の人間としては案外楽しい思い出が多い。(あたかも店が潰れることを前提にした書き方であるが、今後も店が継続するのかは知らない)

 ひとつ書いていいのか悩むが、たぶん書いていいこととしては、彼は自分の家庭に仕事をどうやって説明していたのかについては終始謎であり、そして彼の家庭は話を聞く限りではすこぶる平穏で普通の家庭だったっぽいので、今回の逮捕によって家庭がしっちゃかめっちゃかになっていないのかは心配だ、と思った。また、いつかは逮捕されるのでは、とは彼の仕事に関わるほぼ全員が考えていたと思うし、彼もちょっとは考えていたとは思うので、もしかしたら家族も仕事のことを知っていたのかもしれない。逮捕される危険がある仕事をしている夫、という文脈に平たくなおして自分に置き換えて考えてみたが、好きなら仕方ないのかもなぁとは微妙に思った。(ただし、逮捕事案は淫行なので、浮気という観点からはまずいだろう。)なので、もしかすると彼の周辺人物は誰も動揺しておらず、動揺しているのは利用客だけである、というコントみたいな事態になっている可能性も、十分ある。

 まぁ、違法性を抜きにして単純にわたしが高3の1年間をほぼ過ごした場所という観点から振り返ってみると、非常に楽しかったし、居心地も良かったので、先述したとおりそういう点でさみしくはある。内部事情的には(というよりそもそもアンダー業界の全体像および一般論としては)ホス狂いとバンギャとジャニオタしかいない店で、ゴミみたいなバンドマン情報やホスト情報が飛び交うカオスな空間だった。しかし、みんな人生いろいろあったけど生き抜いてきたというところは共通しているので、ある意味では繊細さを欠いた接し方を遠慮なくできたし、またある意味では非常に繊細な接し方もできた。このブログの過去数本の記事にも、煙草の匂いと小さな音で流れるテレビのニュースと最新ホスト情報をバックに書き上げたものがある。最新ホスト情報や、最新バンドマン情報はいまのところ何の役にも立っていない。

 裏オプとか、そういうのの是非についてはいろいろあると思うし、倫理的に非常にまずいのは認めるところだが、この世にはどうしてもそういう闇に近づかないとどうにもならない人(もっと具体的に言うならばお金を切実に必要としていてお金がなければ死んでしまう少女)がいて、大麻合法化の議論のようになってしまうが、解禁されることで事態が緩和する悪というものもあると思うので、あんまりどこまでも追い詰めてしまうのはまずいんじゃないかと個人的には思っている。なぜなら追い詰められたホス狂いやバンギャなどは別に40分7000円手取りのソープランドとかであろうと働くときは働くし、バランスや(歪んでいようとも)福祉が保たれているなら非倫理的でもその状況のほうがはるかに良いだろうという実感が現場にいたときにあったからだ。もちろん、手段がなければ行動はなされないという主張はもっともなので、そのような手段を丁寧につぶしていくということは現実に即しているが、しかしまた網の目をかいくぐっていけばその向こうには果てがなく、合法であるとされているもののほうがよっぽど搾取的であることもまた現実だと思う。

 そういうお店にいるのは、体感としては7割がいわゆる不良少女的なカテゴリーに分類されるような子だったけれど、残りの3割は普通に生きていて、学校にも行くし、家族とも非常に親しかったり、普通の関係を築いていたりするがその反面なにかに固執して異常性を示していたりする子だったので、世間のステレオタイプな認識でJKビジネスの人やJKビジネスだった人に福祉を与えようとしてもそれは難しいし、仁藤夢乃氏の著作「女子高生の裏社会」などは読んだけど、夢物語っぽい部分があるのは否めなかった。だからこういう逮捕事案や世間に取り上げられ事案があるたびにわたしは「あー」という感想しか出てこなくなるのだけど、まあ、それはわたしの表現力不足なんだな、とも思った。

 もっと根源的な問題から掘り下げていくならば、この世にJKビジネスが存在するのはJKビジネスの利用者が存在するからであり、またサービスの提供者であるJKが存在するからでもある。ニーチェっぽく言うならば、JKがあるゆえにビジネスがある。需要と供給がそこに存在しており、一種の生態系として成立しているカルチャーに、倫理や福祉で切り込んでいくと歪みが生じるのは必然の理なのであるが、日本国には刑法が存在するのでそれは仕方ない。何がダメなのかといえば、そもそも児童には正常な判断能力や労働の選択能力がないっぽいと法で規定されていることにまで辿り着くのだが、周りにいた人たちは特に誰に強制されるでもなく、正常な精神で自らの選択でもってJKってたので、やはりそこが「JKを救済する」といった大人のスタンスと現場の乖離原因であるし、今回の事例に即して考えるならば、逮捕された人にも親愛の情を多少なりとも覚えてしまう原因なのだと考える。

 うーん。長くなってしまいました。今後もお金がなければ死んでしまう少女というのは東京やその近辺あるいは大都市圏に絶え間なく出現するだろうし、死ぬよりは何やってでもお金ほしいという少女のニーズに応答する仕事場もまた絶え間なく出現することだろうけれど、とりあえずみんな精神の安寧を大切にしてがんばってほしいなと思います。 昨年インタビューを兼ねて話した朝日新聞の記者氏にこの思考ルートについて話したところある程度理解は得られたものの、その後半年にわたり「辞めたほうがいい」という連絡を継続してもらい、おぉ正常な社会人だ、と思いました。 話が飛躍するけどお金がなければ何もできないこの世界もどうかと思う。社会主義に傾倒した昔のプロレタリアートの気持ちもよくわかる。自らの意思によってある程度の安全が保たれた状態で労働しているだけで元を辿ってみればお金という鎖に繋がれていることに気づいたので。資本というのは不平等です。仕事中によく「みんな農民になってしまえばいいのになぁ」とか思っていたのを懐かしく感じます。