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ガチ恋口上における「やっと見つけたお姫様」という部分についての考察

 アイドルグループ・MIGMA SHELTERのコマチさんがTwitterでこのようなポストをしていました。

 「超どうでもいい」と言っていますが、そんなことはないです。よくよく考えてみるとかなり深い問題に発展しているのではないかと考えたため、エントリにまとめます。

 

 「ガチ恋口上」とは、主にアイドルのオタクが曲の間奏やアウトロなどで叫ぶ呪文のことです。現在のアイドル文化において、さまざまな現場で散見される光景です。

言いたいことがあるんだよ

やっぱり○○(推しメン)はかわいいよ

好き好き大好き やっぱ好き

やっと見つけたお姫様

俺が生まれてきた理由 それはお前に出会うため

俺と一緒に人生歩もう 世界で一番愛してる

ア・イ・シ・テ・ルーーー!!

 

 ガチ恋口上について言及されたこのツイートについているリプライを見る限り、「王子様だよ」派と「王国の民だよ」派に分裂しているようですが、両者ともに「ガチ恋口上」としてオタクが叫ぶには整合性の取れていない部分が指摘されています。

・王子様説→オタクは自分のことを王子だと思っているのか?

・王国の民説→王国の民は姫が結婚したら祝福するが、オタクは推しに恋愛が発覚しても祝福しない

 このように、アイドルを真に「姫」に例えた場合には矛盾が生じ、結果として「オタクは本当に推しのことを姫だとは思っていないが、「かわいい女の子」に対する褒め言葉くらいの意味で姫だと呼んでいる」という結論が導き出されてしまいます。 しかしこの結論では、「いや、俺の推しは本当にお姫様だよ」と主張するトンデモオタクが現れた場合に反論することができません。

 そこでこのエントリでは、なぜ「やっと見つけたお姫様」という一文が成立し、唱えられているのかについて考えていきます。

 

 そもそも、ガチ恋口上においてなぜ「お姫様」は「見つける」ものなのでしょうか。語呂を考えれば「出会えた」とかでもいいはずなのですが、「やっと見つけた」ではどうしても「必死に探し出してやっと出会えた」的なニュアンスになってしまいます。確かにこのアイドル濫造時代において、本当に好きになれる推しと出会うのはなかなか至難のことですが。

 ガチ恋口上にはその後に「俺と一緒に人生歩もう」という一文があり、そこから「ガチ恋口上を唱えるオタクは姫=推しとの婚姻を望んでいる」と考えてみても、歴史上の王室に生まれた女性の婚姻について参照した場合、ほとんどの女性=姫は政略結婚や見合いによって婚姻の相手と出会っており、とても「やっと見つけた」が適用される状況ではありません。(現代においては、イギリス王室のキャサリン妃や今上天皇が平民との婚姻を解禁して以来の皇室のように自由恋愛による結婚も増加していますが、ガチ恋口上がそのような世情の変化を鑑みて作られたとはとても考えづらいです) 推しが本当に姫である場合、そもそも見つけることは不可能という結論に至ってしまいます。

 ですがファンタジーの中に視点を移してみると、上記に述べた例にあてはまらない婚姻例が多数出現します。特に、「王子が必死に恋に落ちた相手を探し出し、結婚に至る」という例において恐らく最も有名だと思われるのは童話「シンデレラ」です。個人的解釈ですが、「やっと見つけたお姫様」という一文の成立の中に、「シンデレラ」からの影響は少なからず存在すると考えます。

 また、オタ文化との親和性という面からアプローチした場合、「スーパーマリオブラザーズ」や「ドラゴンクエスト」のように「勇者が姫を救い出しその後2人は結ばれる」という文脈を持ったゲーム、及びそれらに影響を受けたコンテンツは高い精度でオタクカルチャーに浸透しているため、そちらにルーツを持つという説も妥当でしょう。

 そもそもオタクは「オタサーの姫」といったように「ちやほやされている女性」という文脈で「姫」を使用したり、単なるかわいい女性に対しても「姫」を使用したりしていますが、個人的意見として例に挙げたように気軽に「姫」が使われている理由としてはずばり現行の日本国における法(皇室典範)において制度上「姫」が存在しないからではないかと考えています。 「姫」にあたる人物は「内親王」と呼称されているため、たとえば愛子内親王の写真を見て直感的に「姫」という形容をする人は、少なくともガチ恋口上を唱えるような層にはほとんど存在しないでしょう。これは少し突っ込んだ話になってしまいますが、日本国にはわずか約70年ほど前まで皇室に対して侮辱していなかろうと少しでも失礼とみなされれば不敬罪になるという制度が存在したため、現在に至るまで、それこそ「オタサーの内親王」といったような発言をする人は少ない傾向にあります。ネット上の言論では確かに皇室叩きは一定の支持層を持っているように思えますが、現実社会においてそのような発言をする人はネットでの支持層に比べれば間違いなく相対的に少ないでしょう。

 結論として、コマチさんの書いた「どっち目線なの」という疑問に対する答えとしては、「それぞれの視点を持った各コンテンツに影響を受けていると思われるため、両方の目線が混ざり合っている」ということになります。

 

 また、これは余談になりますが、いわゆるメンズ地下アイドルにおいてもガチ恋口上は存在し、その場合該当部分は「やっと見つけた王子様」へと置き換えられています。

 個人的にこの一文にはあまり違和感を覚えないのですが、その理由としては「シンデレラストーリー」という語句があるように、なんでもない女の子が王子様に見初められて生活ががらりと一変する、という文脈はままあるものである為ではないかと思います。(ここを深く掘り下げてしまうと、ジェンダー論にまで行き着いてしまい、ジェンダー論には全く明るくないので書くことを避けますが…)

 ガチ恋口上を唱えている人の中に、「本当に推しを姫だと認識する人/かわいい女の子を便宜的に姫だと讃える人」の二種類が存在する可能性が出てきたことは非常に興味深いです。