I READ THE NEWS TODAY, OH BOY

舞台、俳優DD、サブカルかぶれ等

名作ドキュメンタリーの感想などを書く

・ジャニーズJr.の真実/2012年, 日本テレビ

 ジャニーズJr.に関する知識が2014年で止まって久しいのでこのドキュメンタリーがジャニーズ事務所の現況にそぐわないものであったら大変申し訳ないのだが(特に当時はまだいわゆる「派閥」問題が色濃くなる前でありSexy Zoneもギリギリ5人であったと記憶している。私の記憶が正しければ3:2に分裂し始めたのは2014年「King&Queen&Joker」のリリース後からの話だ)このドキュメンタリーに登場するジャニーズJr.たちの去就も含めて鑑賞してみると非常に興味深いものがある。

 2014年のジャニーズWEST以来誰もジャニーズJr.からデビューできておらず、平野紫耀くんなどはJr.なのにもはや胸キュン映画の主演を務め、ジャニオタが大量にスタダや韓流や果てはYouTuberに流出する混沌の現代を解釈するためには何が何でも見ておきたいという感じがする。

 ちなみに、地下アイドルのオタクになって初めて判明したことだが、ジャニーズJr.のレッスンは恐らくこの世のアイドルの中で最も厳しいと思われる。

 

・ザ・ノンフィクション「中年純情物語~地下アイドルに恋をして~」/2015年, フジテレビ

 「地下アイドル」と銘打っているがこれは「地下」よりももっと下にあるところの話だと一般人の方の観点からは解釈してくださって構わない。(絵恋ちゃんの定義するところによると「地底」はオリジナル曲が無いのでアニソンを歌っているような人たちのことらしい、私もその定義には同意するがここではあえてネットで常用されるような意味で使用する)

 地下アイドルを「地下アイドル」とひとくくりにするにはあまりに定義が広すぎるだろうというのが実際地下アイドルのライブに行くようになっての個人的な感想で、例えばTOKYO DOME CITY HALLでワンマンをやった生ハムと焼うどん、なんとか横浜アリーナをそこそこ埋めて解散した第1期BiS、もう少しキャパシティを下げてみればMaison book girl赤坂BLITZでツアーファイナルをやっていたし、要するに何が言いたいかというと、ワンマンであれば1000人前後の動員を都内で叩き出せる経済的に安定したグループであろうと「地下アイドル」、その一方でドキュメンタリーに登場する「カタモミ女子」のようにグダグダな運営に嫌気がさしてメンバーが集団で辞めるようなグループであろうと「地下アイドル」というのはいささか同一視しすぎではないだろうかという話だ。 よって、これを「地下アイドルだ」と捉えるべきではない。もっともっと地底にある、いっそ地獄の釜くらいに位置する水準の話である。

 メンバーが大量に離れて別グループに移籍、新メンバーを推して変わらない箱に残るヲタクと推しについていって別の箱に移るヲタクという点では、改めて見てみると「歴史は繰り返すものなんだ」と思わざるを得なかった(AqbiRecの悪口じゃない)。

 お笑いタレントの東野幸治がこのドキュメンタリーについて「申し訳ないがめちゃくちゃ笑ってしまった、俺は最低だ」的なコメントをしていたが、一般人からしてみるとまさにそうで、ヲタク(おっさん)が若い子に肩を揉んでもらってニヤニヤし、その上でいかにも「純粋な愛」的な演出をされる(しかもそこには金銭関係が発生している、いやむしろ金銭関係しかないと言うべきか)のは笑止以外の何物でもないし、ヲタクが現場でつるんでいるだけの行為を「真実の友情」的に演出されるのも笑止以外の何物でもない。このドキュメンタリーに出てくるおっさんは、お金を払って若い女子に肩を揉ませて悦に入っているような連中なのだから。そういう点で、このドキュメンタリーには見る価値がある。ヲタクの寒い幻想が、テレビ局の力で真実になってしまっているのだ。(やや悪く書いたけど、実際普通に面白いので見てほしいというところはある)

 

・A/1998年制作、A2/2001年制作、森達也監督

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A2 [DVD]

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 上記2つの後に本作を挙げるのはもしかすると森監督にめちゃくちゃ失礼かもしれない。最初にすれば良かったかも。地下鉄サリン事件以降のオウム真理教内部を取材した映像であり、視点としては(森監督はいたってフラットな立場でありたい、がそれも難しい、と書いていたが)ややオウム側に立っているという感も受ける。しかし犯罪の被害にあうのが人間であれば犯罪を起こすのもまた人間だし、社会的に疎外されてもなお信仰を追求する人々とはいったい客観的にどう見えているのだろう、という様子は深く知ることができる。そしてできる限り2本続けて見るべきだと思う。

 森監督は直近の仕事としてはゴーストライター騒動で一躍有名になった佐村河内守を描いた「FAKE」が一部界隈で話題をさらっていたが、題材がどうしても「A/A2」に比べると一個人なので、その浅さを補うためにエンタメに近い仕上がりになっているという感は否めない。渋谷のユーロライブで上映していた。

 ユーロライブに関する全然関係ない話を書いておくと、映画版「ライチ☆光クラブ」を見たら、モロにエヴァ旧劇をパクったダフの例のアレ、独特のテンポの悪さ、比類なきまでの全てのシーンへのぼんやりとした印象の悪さなどに辟易してしまい(それでも好きな作品なので結局のところ構成力が無いだけで作品自体については星3/5つくらいの評価を下せたと思う)監督は一体誰なんだと検索してみたら映画「先生を流産させる会」の内藤瑛亮監督で卒倒した、ということがあった。

先生を流産させる会 [DVD]

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 2012年に渋谷のユーロライブで公開されていた「先生を流産させる会」は一部ネット上で(ほとんどサブカル界隈である)グロいエグい社会派だと話題になっており、当時15歳だった私はなけなしの小遣いを握りしめて観に行ったのだけれど、とにかく鑑賞後の気分が悪くなる、胸クソというような言葉を煮詰めたような一本で、しかし忘れることができず強烈にいつまでもいつまでも印象に残り続けてしまうというある意味印象深い作品である。

 「ライチ☆光クラブ」に内藤監督を起用したのはグロに強い思春期に強いという至って真っ当な理由なのかもしれない。しかしそれにしてもサブカル界隈で局地的に受けていた監督に唐突に全国公開作品を撮らせるというのはちょっとどうなのかとも思う。良く古屋作品を好きな女子が自称サブカルを名乗っているがそんなわけないだろうと言いたい。古屋作品はむしろドメジャーの部類に入る。サブカル漫画というのは理不尽だったり理解不能だったり唐突だったりして読者は「それがカッコイイ」としばしば崇め奉るものであるのだけど(嘘だろと思った人はたとえば吾妻ひでおの「カオスノート」を読んでほしいのだけれどあれ本当に意味不明だから/でもそれが良いんだろうなと思う)古屋作品にはちゃんと盛り上がりと盛り下がりがあって物語性を軸に話が進行していくのできちんと「読める」。他のサブカル漫画と一緒にしては古屋先生に大変失礼ではないかと思う。しかし古屋作品の支持層とアーバンギャルドのリスナー層がモロに被っていることは否定しない。恐らくそれは真実。

 ただ内藤監督が撮っていると認識していると途端に「ライチ☆光クラブ」が超絶胸クソ作品に見えてきてしまうので困る。そんな話じゃないんだけど。推し俳優をグロい殺され方した人にとっては十分胸クソだと思いますが……。

 

・探訪網走刑務所/1981年, NHK

探訪網走刑務所 [VHS]

探訪網走刑務所 [VHS]

 

  VHSと言われましても……。YouTubeにあるので探してみてね。

 網走刑務所を描いたドキュメンタリーだがNHK特有の「情がない」感じがひしひしと伝わってくる。NHKは容赦ない。民放で夕方にやっている15分ドキュメンタリーなどは(大槻ケンヂもエッセイに好きだと書いていた)けっこうお涙ちょうだいで終わったりするのだけど淡々としすぎていてめちゃくちゃ怖いので深夜に見ないほうが良い。でも映像作品はシンプルであればあるほど面白いなと思う。

 篠田博之氏などが再三主張していることであるが、「刑務所に入る」「死刑になる」ことが目的化/またはそうなってもいいやと感じる人間による犯罪が発生している現状をどーにかこーにかしないとどうにかしたくても根本的にはどうにもならないと思ってしまう。

 

NHKスペシャル「未解決事件」/2011年-, NHK

www.nhk.or.jp

 グリコ・森永事件、オウム真理教事件、尼崎殺人死体遺棄事件、ロッキード事件を取り上げており、こう言っては本当に不謹慎なのだが、ドラマパートが無類の面白さ、出来の良さを誇っている。予算という名の国民の受信料がが惜しみなくつぎ込まれているが正直こういう作品を制作してくれるなら全然受信料払うよと思う。特に「file.02 オウム真理教事件」で洗脳される信者の女性や「file.03 尼崎殺人死体遺棄事件」で乗っ取られる一家などのパートはあまりの出来の良さに本当に眠れなくなってしまうレベルで恐怖を覚える仕上がりである。サスペンスドラマの5万倍はサスペンスしている。取り上げられている事件については本を読むのも面白いが、本作はNHKの実力がひたすらすごいという点で推しておきたい。