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舞台、俳優DD、サブカルかぶれ等

ミュージカル刀剣乱舞・紅白歌合戦・TVショーへのコンプレックス・根底に日本人としての自意識が流れているということ

boogiewoogie.hatenablog.com

 

 ミュージカル「刀剣乱舞」の人たちが紅白歌合戦に出場するということに対して今さら当ブログであーだこーだ説明を加える必要もないと思うので割愛する。私はとても素直に「恥ずかしい」という気持ちになったのでとても素直にそう書いた。

 

 

 しかし私がその実一番ショックだったのは「紅白歌合戦2.5次元的なものが出ることに自分がショックを受けていること」そのものだった。 これは何でかというと、自分の根底に流れる日本人としての自意識みたいなものをまだ捨てられていなかったことがショックだし、ここ五年くらいはどっぷりサブカルチャーに浸かって、メインカルチャーやTVショー的なものとは距離を置いていたはずなのに、いつの間にか自分の見ている世界の距離がメインカルチャーに近づいていっていたこともショックだった。

 紅白歌合戦といえば、日本人なら誰もは一度が見たことがあるはずの(……とされているし実際に社会では社交的無難な話題のひとつとしてセレクトされることが多く「そんなもん興味ねーよ」という人々をうんざりさせていると専らの噂な)国民的番組である。

紅白・視聴率の変遷

 このウェブサイトによると昨年の視聴率は1部・35.8%、2部・39.4%。ゴシップ誌では視聴率低下がどーのとか言われているらしいけど、この「スター不在」の時代において日本国民のうち3~4割が同じ画面を見ているっていうのも何かとってもすごい話だ。低下してなお3割もの人間が同じ画面を大晦日数時間のあいだつけ続けているなら別にいいんじゃないかと思いますけどね。

 私のまわりの人々、20歳前後の女子たちには、共通のスター体験もアイドル体験もない。 小学校くらいで「花より男子」ムーブメントが起きて嵐という時代の寵児がスターダムにのし上がるのを目撃したりはしたものの……、当時すでに襲来していた韓国アイドルや「ヘキサゴンオールスターズ」とかいうふざけたコンテンツも同時進行で存在していたためにその人気は狂信的とまでは言えず、よって母の世代が語る「光GENJI」伝説ほどではなく。 流行した歌手、アイドル、TVタレントを振り返ってみても、強烈な、皆が共有したスター、というような存在は、これといって思い浮かばない。

 さとり世代とか、色々言われているけど結局は「個人で好きに個人の神を信奉しましょう」ということであって、SNSが中学くらいから存在していた私たちの世代にとって人格はすぐに作り変えられるものであり、またSNS上での仮想的誕生も、仮想自殺も簡単。人間関係がいかに脆くて、儚いかということを義務教育でとてもよく学びました! そのため「みんな」というようなキーワードは辞書に載っている以上の意味を成さず、よって趣味も細分化していき、どーたらこーたら。というようなことを経て私は結局俳優オタクになり5年の月日が経った。

 ここ数年、紅白歌合戦をまともに見ていない。 大晦日の家族団欒も特にない。よって自分は紅白歌合戦的にも、自分的にも「どーでもいい人」であり、実のところ先日の発表まで紅白歌合戦に誰が出ているのか、というのは本当にびっくりするほど興味がないトピックスであって、日頃からwebに流れている洪水のような情報のひとつでしか無かったのだけれど、 自分のハマった2.5次元的なものの出場決定により自分の中に急に「恥ずかしい」という、紅白歌合戦に対する何らかの感情が湧いてきたことがまずショッキングだった。とうの昔に興味を失くしていたはずなのだけど。 このショックは、私のDNAには愛国教育的なものを受けたわけでもないのに日本人的なものが刻み込まれていて、それゆえに「紅白歌合戦」に反応してしまうのか……というショックである。

 私の中にあるコンプレックスは、TVショーへのコンプレックスであって、メインカルチャーを好きになれなかったことへのコンプレックスだ。嫉妬もあると思う。正直に吐露すると胸キュン映画とかGReeeeNの音楽とかJ-POP全般を好きになれないのも全部コンプレックスだ。そうだ、広告代理店コンプレックスとでも表現したらいいのかな? 広告代理店の噛んでいそうなもの全般をはなっから斜めに構えて見てしまうクセがある。とっくに成人しているのだけれど永遠に中二病を発症しているようなものと捉えて頂いてかまわない。

 そのコンプレックスから逃れるために、最近は2.5次元的なものに没頭していた。少なくとも劇場にいる限りは広告代理店の影を見ることはない……サブカルチャーの中で得た安らぎを突然容赦なく破壊する紅白歌合戦という存在に私は拒否感を覚えた。 この安らぎをどうかお茶の間に大公開しないで!そして「正しい論評」のもとに晒さないで!助けて!アーメン!

 2.5次元というのは、基本的に劇場に足を運んだ人だけが見るものであって、いわば入り口で「このコンテンツには、コスプレや妙ちきりんな歌、そして不可解なアイドルパートが含まれます。承諾される方のみYesをクリックしてください」というダイアログで「Yes」をクリックした人のみが閲覧可能なコンテンツのようなものであって、その注意事項をくぐり抜けた人の中でもやっぱり賛否両論が流れてしまうこともあるわけで、大晦日のお茶の間にいきなりババーンと大々的に流していいものなのかどうかは、2.5次元をけっこう観ているはずなのに、疑問が拭えないというか、むしろ疑問だらけなところである。 ダイアログをクリックし、文脈を共有した人だけで見ていたものが、突然全日本に晒されてしまうと一体どうなるのか、考えるに恐ろしい事態だ。

 テレビというのはボタンを押すだけで簡単にほぼ全ての家庭で受信できてしまうので非常に恐ろしい……、テレビというものの影響力をこれまで私は無視していたがここにきて突然無視できなくなり、webの時代になってもやはりテレビは旧態依然とした日本国民に対するパワーを保っている、ということをはからずも実感するハメになった。だってみんな興味がないならこんなに大騒ぎになりませんよ。みんなやっぱり、テレビのこと好きなんじゃないですか。そう、多分私も……。