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19歳が、結婚したくないし子供もいらない、と思う理由

 今日の「news every.」で、「イマドキの18歳・19歳に聞く!あなたは結婚したいですか?」みたいな特集をやっていた。原宿の路上で声をかけて、どうして結婚したいのか、結婚したくないのかについて尋ねていた。アンケート結果によると、約60人中50人ほどが「結婚したい」と回答していたらしい。わたしは、ええ、そんなに多いの、と素直に思った。

 わたしは結婚はしたくない。それはもちろんオタクなので趣味の活動に熱中しているうちはそういう気にならないというのもあるし、金銭的な理由ももちろんあるけれど、一番の理由は、身の回りで結婚して幸福になっている人をあまり見ない、ということにある。身の回り、というのはすなわち、自分の家庭である。

 わたしは都内の一軒家に両親と育ち(持ち家だ)、4人兄弟の長女である。3つ下の弟、6つ下の妹、8つ下の弟と幼少期から今に至るまで暮らしてきた。実家を離れていた時期もあったけれど、今は体調の理由もあって実家で暮らしている。

 一見幸福な家庭に見えるだろう、と思う。でもわたしの家には見えない「沼」みたいなものがどよんと漂っている。成長してから気づいたけれど、わたしの家は、ちょっと変な家庭なのだ。

 母はオシャレに全く興味がなく、田舎出身の母は東京での友達付き合いが全くないし近隣付き合いも嫌う少し奇特な人で、そのうえわたしが小学生くらいまでのあいだホメオパシーに嵌っており、よくわたしにレメディーを飲ませていた。 ちなみにわたしは、ホメオパシーを全く信じていない。

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 家には友達を上げることを幼少期から現在まで一切許されず、両親の友人が遊びに来たりすることもごく一部を除いてない。その理由は現在に至るまで不明であるが、とにかく母が拒絶する。親戚付き合いもほとんど無い。父が実家と絶縁しているし、母は母の父(つまり、祖父)のことを嫌っているからだ。

 だから小学生になって、周りの皆が「お正月には親戚みんなで集まってお年玉たくさん貰って」なんて話をしているのを聞くと、すこし奇妙に思えたけれどしばらくして自分の家が変なんだ、と気づいた。 父が実家との交信をしているのを、一度だけ小学生のときに見たことがある。祖母からの電話で、「夢であんたが死んだけど、生きてる?」というものだった。父は「変わらないよ」と返した。 それだけだった。

 それはさておき、「結婚とは幸福なものだ」という固定概念をわたしが子供の頃から持っていなかったのは、両親の不仲の絶頂期の中でわたしが育ったことにある。

 小学4年生のとき、突然母は母の兄、つまり伯父の家にわたしたち兄弟を預けてなにやら深刻な話し合いをしたり、小奇麗な格好をして外に出かけて鬱屈そうな表情を浮かべて帰ってくるようになった。不信感を抱いたわたしは、母がお風呂に入っている隙に母の鞄に入っている書類を盗み見た。 そこには興信所の調査書類が入っていた。

 父は不倫をしていたのである。

 思い返せばわたしの「もうどうなってもいいや」感は、ここに端を発していたような気もする。興信所の調査書類には事細かに父の一日の行動や、父と母とのメールでの生々しいやりとりの証拠、そして離婚する場合の財産分配などについて記載されていた。父の性癖や不倫相手が同じ会社の人間であることまで事細かに書いており、わたしは目の前がくらくらするような感覚に陥った。

 書類によれば、離婚した場合には子供4人は母が引き取り、自家用車と自宅を母のものとする代わりに養育費は請求しない、となっていた。書類を読んで、わたしはとにかく父のことを汚いと思った。汚物であり同じ家に住んでいることが信じられないほどに嫌悪感を抱くようになった。

 わたしは父に、書類を読んだことを伝えた。小学4年生の、激昂したわたしは、父に土下座を迫った。「気持ち悪いから、出ていってほしい」と言った。

 父は土下座をした。

 騒ぎの末、結局、両親は離婚しなかった。その理由がなぜなのかは未だにわからないが、とにかく今では両親は和解したようで淡々と同じ家で暮らしている。でもわたしの父に対する嫌悪感はおさまらなかった。2chのVIPに「女だけど父親の部屋にあるAV晒していくwww」というスレを立てて鬱憤を晴らしたこともあった。(鬱憤の晴らし方が幼稚である)そのスレはそこそこ伸びた。エロ雑誌やAVを持っていることに耐えられなくなって父の部屋にあるAVをわざと目につくようにハサミでずたずたにしてごみ箱に捨てた。

 何度も何度も、最低、出ていって、気持ち悪い、と父に暴言を吐いた。父は私に何度も謝った。

 わたしは、わたしが父の遺伝子を継いでいることに絶望した。

 興信所の書類には、わたしが記憶を持つ前の父のことも書かれていた。父が昔、ギャンブルで借金を抱え義父に手伝ってもらってやっと返済したこと。幼少期のわたしに怒鳴ったりしていたこと。引きこもってゲームに熱中し働いていなかった時期があったこと。

 わたしは、なんだか精神的に不安定になった。学校に行きたくなくなったりリストカットをするようになったりした。 その頃に家庭がぐらぐら揺れていたことと両親の騒動のあいだに相関性があったかは、わからない。(でもたとえば医師にこの話をすれば、それは相関性があると言うだろう)

 中学に入ってもわたしは不安定なままで、結局受験して入った頭のいい学校を1年で辞め、引きこもりになったり精神科に通院したりを2年ほど続けた。中学1年生の頃は学校に行かずに引きこもってテトリスをしていると父に怒鳴られ、わたしは涙を流した。なんでおまえに怒鳴られなければいけないんだ、と思った。

 不登校の子供の気持ち、というのは複雑なものだ。行きたくても行けないし、人間関係のことで疲れてしまうし、唯一の逃げ場である家すらも逃げ場にならないならばもう死んでしまおうと思う。

 いまSNSで仲良くしてくれている人の娘さんも、不登校になりかけている、と書いてあった。わたしと似たような状況だった。中学を辞めたときや引きこもっていたときはとにかく死にたくて死にたくて仕方がなかった。

 そして、理不尽だけど、親を恨んだ。どうしてわたしは生まれてきたんだろうと思った。それは小学生のときからうすぼんやりと抱いていた思いだった。こんなに苦しい思いをさせるなら、この世に産んでくれなければよかったのに。産んでくれなんて頼んでないし、産むなら責任持ってわたしに苦しい思いなんてさせないでほしい。

 わたしが社会でうまくやれないのが悪いから死ねばいいんだって思うと、両親はそれを止めようとする。でも、生命はわたしの持ち物だ。間違いなくわたしだけのわたしの生命だ。それを止める権利なんてない。不可解だ、とわたしは思った。

 病院に通って、ちょっとわたしの精神状態はマシになって高校に入学することができた。高校生になって、ちょっと恋愛をした。 でも自分が結婚生活でうまくやっていけるとも、子供をきちんと育てていけるとも思えなかった。自分にそういう血が流れているんだと、ずっと思っていたからだった。

 結局わたしは趣味の追っかけが高じて高校も辞めてしまい、そしてなぜだか風俗嬢になって(これはきっと、やっぱり「もうどうなってもいいや」精神の現れだと思う)、そして鬱病になり、いまは通院しながら少しだけ前よりもまともな仕事をして、でもまだ追っかけは続けている。

 追っかけに狂気的に熱中してしまうのは、わたしがその相手に「夢」とか「希望」とかを託しているからだと思う。わたしにできなかったことを、彼にやってほしい。それは売れることだったり、ステージでキラキラすることだったり、お芝居で人を感動させることだったりする。そのためにわたしは応援することでなんとか「夢」を託そうとする。そして夢を叶えている相手を見て、代理的に満足感を得ている。 辛うじて、そのことでいまわたしは生き甲斐をみつけている。生きる意味になっている。追っかけをしていなかったら、わたしはいまごろ自殺していたかもしれない。

 いろいろあったけれど、今は親とは微妙な距離を保ちながら、普通に暮らしている。父とも母ともそこそこ話す。けれど、特段仲がいいわけではない。

 追っかけに関して、高校生のときに父に咎められたことがあった。わたしは、いままでああいう(それは、小学生のときのことも、中学でいじめられたことも、自殺未遂をしたことも)いろんなことがあって、生きていて楽しくなくて、でもはじめて追っかけをやって生きていて嬉しいと思ったり幸せだと思ったりできるようになったのに、どうして辞めなければいけないんだと泣いて暴れた。もし追っかけを辞めたなら、わたしは生きている意味がないから廃人になってやがて死ぬとわめいた。

 それから父も母も、放任主義になった。 どうしてわたしの気持ちをわかってくれないの?と言ったけれど、父は、君の気持ちは理解できないからわかることはできない、でも認めることはできる、と言った。 隔たりを感じた。

 

 もしわたしが結婚したとするだろう。結婚というのは重大な問題で、少しのことで撤回できたりするようなものではない。では、その相手がなにか欠陥をかかえていたら? それで自分が苦しむことになったら、後悔するだろう。

 もしわたしに、子供ができたとしよう。でも、その子供が学校でいじめに遭って死にたいと思うようになってしまったら? もし結婚相手が不倫をして、子供がその事実を知って、自分に罪悪の血が流れていると思うようになってしまったら? 子供はわたしのことを、憎むだろう。そして恨むだろう。「どうして産んだの」と責めるだろう。

 だからわたしは、結婚はしたくないし子供もいらない。

 これが19歳の素直な意見だ。

 news every.の調査によると、20代や30代で結婚したくないという人の理由第一位は「金銭的な問題」らしい。まあ、それもあると思う。でもそれ以上に、そもそも「結婚なんて、ましてや子供なんて絶対に」という人の気持ちの発端を探っていくと、自分の生育環境につながっていくような気がしてならない。