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舞台、俳優DD、サブカルかぶれ等

舞台「ドラえもん のび太とアニマル惑星」を観てきた感想

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 若手俳優を見続けて3年になるんですが、数々の舞台を鑑賞して最終的に行き着くところがドラえもんだとは誰が想像したでしょうか。そんなんありかよ! 下北沢のザ・スズナリとかじゃないのかよ! 今をときめく小越プロがまさかの野比のび太役とのことで、化学反応的にどうなっちゃってしまうのか気になっており、行けたら行こーかな程度に思っていましたが、そういえば私ニートでした、毎日暇でした、まじかよ。 素直に観てきました。

 ふら~っと行ったので、2階で観ました。初めてサンシャイン劇場には2階があるという事実を知りました。まじかよ!階段ちょう長くて引きこもりは疲れました。最前は手すりが邪魔でぎりぎりステージが全部見えるかなって感じですね。

 またしても昼夜逆転していて、昼の11時に寝たので、19時開演のソワレに辿り着くには16時に起きなくてはならず死んでしまうかと思いました。昔さくらももこがエッセイに「夜型なので、昼間に用事があると死ぬほど苦痛」と書いていて、当時小学生だった私は、そんなわけねーだろ!と笑っていましたが、今ではその気持ちが切にわかります。さくら先生に笑ってすみませんでしたと謝りたいです。 しかもサンシャイン劇場は遠い。なぜあんなに池袋駅から遠いのか??行きは東池袋使いますけど…。キャストもつらいと思う、あの距離。箱自体は、結構好きなんですけど……。

 さて私は昔だいたい同じ内容のヒーローショーを150回とか見る気が狂ったおたくだった黒歴史があるので、小さなお友達最強説というのは身をもって実感している為、小さなお友達だらけの現場を想像して身構えていたのですが、客層はほとんどが成人女性と成人男性でした、アレ? 平日のソワレなのでしょうがないかもしれないですね。 入場したら、いきなりロビーで大道芸人の人たちがバルーンアートを披露していて、客席内では愉快な格好をした人たちがドラえもんの曲メドレーを延々と演奏していたので、来るとこ間違えたか!?と思いました。…後で知ることになるのですがその人たちは全員アンサンブルの方々でした。前説のお兄さん(ぶたさん役)の声出しが、「じゃあ僕が、亀田のあられ!!って言うので、みなさん、おせんべい!!って言ってください!!」という内容で、愉快極まりなかったです。ていうか、前説ある舞台初めてだよ……。

 地味に衝撃だったことは、開演前に2階の客席の端っこで歯磨きをしている人がいたことでした。まじかよ。ミュージカル「神様はじめました」でも客席で歯磨きをしている人がいた騒動があったなあとぼんやり思いながらその人を眺めました。その人は歯磨きが終わったら客席から去っていき、開演中も現れることはありませんでした。……関係者かなあ!? 関係者にしても、歯磨きは裏でやってください、お願いします!(こんなバカみたいなことをブログに書かなきゃいけないの本当につらい)

 

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 この驚愕のスピード感。飽き性なオタと椅子に座り続ける体力がないオタにも優しい親切設計! 嬉しい!(嗚咽) 2幕さあ、短すぎて体感的には開始15分で終わった。元ネタの映画が上映時間100分なので、時間としては忠実に再現していることになりますね。

 小越プロののび太は、さわやかなのび太で非常によろしかったと思います、すばら。「のび太は映画になると急にかっこよくなる」というのは定説ですが、そのかっこいい方ののび太ですね。ランドセル背負ってるの、最初は「!?????」ってなるけど、5分くらいすると目が慣れるのこわE。小越プロの他に驚愕キャスティングとしては、陳内さんがスネ夫役なんですよ、まじかよーーーー!!!陳内さんのランドセル、こわE。 しずかちゃんの方は、どっからどう声を聴いてもしずかちゃんで、多分アニメに出てても違いがわからないので、もう充分しずかちゃんだけでこの先食べていけるのではないかと思ってしまいました。 チッポ役の佃井さんは仮面ライダー鎧武で見て以来だったので同一人物なのかがしばらく信じられずうっそーーん!!とずっと思っていました、言われなかったらたぶん永遠にわかんないです。驚愕。 小越プロのキャスティングが決定してから、上演までに2年かかったそうです。こういう「上演までに◯年かかりました」芸は、「構想から◯年!」といった形式でしばしば世の中において見られがちですが、肝心の作品がグダっていると「◯年かかってこれかよーー!!!」とオタにちゃぶ台を投げ飛ばされるハメになるので、面白い舞台で本当に良かったなと思いました。 ドラえもんは、最初に出てきただけで客席から笑いが巻き起こるので存在がチート……。

 1幕で笑わせて2幕で泣かせるという非常にベタな構成だったけど、何かそれが良かったなあ、変にロジカルになってなくて。 見ていて、やっぱドラえもんってすごいよなーと思ったのは、キャラ造形がしっかりしていて、登場人物が何をするかがだいたい予想できて、だいたいその通りに話が進んでいくので、驚異的にストレスフリーなんですよね。何考えてるのか全くイミフなキャラのいる舞台を見てしまうとしばしば「は~~~~???」みたいな気分になってしまうんですけど、全くそれが無い。 これはすごい。革命です。ネルケはもう、テニスの王子様みたいに、ずーーーっと話だけ変えてドラえもんを上演し続けばいいんじゃないかとさえ思いました。全然あり。あり寄りのあり。

 エンタメとしてのクオリティも想像を絶する高さで、(というか、私の脳内で、ドラえもんを舞台でやるというのが要するにどういうことなのか全く理解できてなかったのもあるけど)フライングにしろ、映像投影にしろ、何というか地味にネルケの全技術注ぎ込んでる感がありながらもそれをしれっとやってのけるというところに圧倒的な好感を持ちました。そしてハイテクとローテクを有意に混ぜると面白いというのはよくある話なのですが、やっぱりタケコプター人形とドリルの擬人化でげらげら笑ってしまいました。 笑いのスタンスは、基本的にシュールだったんですけど(ドラえもんが部屋セットにふすまを使わずに平然と入るシーンとか、ジャイアン激似のゴリラとか)。鴻上さんの趣味なのかな~わたしは好きだよ!休憩の入り方も盛大なメタネタなんだけど、面白いから圧倒的に許された。

 ハッピーエンドなのがわかっている舞台ほど気楽なものってないんですけど、予想を遥かに超えて順調なハッピーエンドだったので心が穏やかに保たれたまま観ることができました。 のび太たちがニムゲと戦ってアニマル星を救出するというのが物語の主軸なのだけれど、その過程でのび太たちの中にある(べき)リビドーの描写が徹底的に排除されていてびっくりした。そのおかげで鑑賞後の感想があっさりさっぱりしているし、のび太たちはなぜアニマル星を救うのか?という議題において「正義だから」以外の答えがまるで存在しない物語世界で、のび太たちに全く自己の概念が無く、他者をただただ救うために戦っているので、全くツッコむ隙もなく「いい話」として仕上がっていました。 登場人物が世界を救う系の物語類型においては、しばしばヒーロー役のキャラクターの言動がエゴイスティックになっていることがあり、自己愛を感じてしまい(まあ、それが人間本来の姿ですけど…)萎えてしまうことがあるのですが、この作品は徹底的にそれらを排除しているので萎えることなく見られる安心設計です、やったね!! 「世界を救うこと」と、自己が全く別のものとして分離されているので、世界に自己が直結するセカイ系の対極に位置するストーリー展開が繰り広げられておりとても興味深かったです。 セカイ系の見過ぎで主人公は戦うときに必ずうじうじ悩まなければいけないものだと思っていたのでダメ人間のはずののび太があっさり「よし!戦うぞ!」って決意する展開に度肝を抜かれました。そんなんあり!? こんなの思いつくのアンチセカイ系の論客しかいない!!と思ったら元ネタが1990年だったのでwikiをそっ閉じしました、違うわ、藤子不二雄先生の心が優しいんだよな。

 笑い+ほのぼの要素+いい話という黄金パターンの揃った全年齢対象安心設計の舞台なので暇な方はぜひ見に行ってください。4月2日までだそーです。ロミちゃんは天使だよね!?