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映画「PとJK」/脚本にすべてが屈するのは斬新すぎると思う

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 遅まきながら見てきました噂の「PとJK」。高杉真宙が見たい~高杉真宙が見たいな~金髪の高杉真宙が見たいよ~と1ヶ月近く騒いでいたら友達が遊びに誘ってくれました、やったあ!

 私はこういう、まさしく「PとJK」のような、当人たちはいたって真剣に作っていたが、結果としてめちゃくちゃ面白くなってしまう映画が大好きです。その点で「PとJK」は面白映画大賞2017に首位でノミネートされるべき作品なのですが、検索をかけると女子高生が「亀梨くんに胸キュンした」しか言っていないので、マジかよ……と思ってしまいます。私はさまざまに絡み合った大人の事情や、恐らく撮影期間中に発生しまくったであろう監督やプロデューサーと脚本家との折衷を想像して、非常に「面白いなぁ~」という気分になってしまいました。 そういう感想です。

 

 前情報でスタッフについて何も知らなかったので、エンドロールで知ったのですが、本作は昨年記事で絶賛した「オオカミ少女と黒王子」と同じ廣木隆一監督の作品でした。

映画「オオカミ少女と黒王子」ーー共依存への没入。 - I READ THE NEWS TODAY, OH BOY

 「オオカミ少女と黒王子」が内向きで根暗なタイプの恋愛をするエリカの物語であるのに対し、「PとJK」はとことん外向きかつ前向きでネアカな恋愛をするカコの物語で、全く違うタイプのヒロインがそれぞれ登場人物に絡んでいくことになるのですが、それにしても廣木監督が「PとJK」でストーリーをコントロールできずに前半のうだうだ感とコント感を生み出してしまったのは、どう考えても脚本が悪いとしか思えません。

 綺麗な空想世界の中で(それは二階堂ふみ玉城ティナといった非現実的な雰囲気のキャストによって成立している)他者への好意について自己と向き合い続けるエリカという一貫したテーマを持っていたために文学的ですらあった「オオカミ少女―」を観てからだと、「PとJK」は結婚→友情→真実の愛、とテーマが二転三転していくのでブレている印象を受けてしまい、全体としてのまとまりを大きく欠いていると言わざるを得ません。中盤の大神が過酷な家庭環境の中でもカコたちの救いの手を受けて学校に行きたいと願うようになっていく件とか、いい話なんだけど、結婚とは何の関係もないじゃないですか。しかも大神は引っ越して退場するので最後の山場にはいないし、120分超という長さを鑑みても亀梨担からは「大神のくだりイラネ」という謗りを免れないように思うのですがどうなんでしょうか。

 個人的にはこの映画のキャストの中で一番高杉真宙が好きなので着ぐるみの中から大神くんが登場した時は思わずスタンディングオベーションしそうになりました。応援上映があったら廃墟での喧嘩のところでメガホン持って大神くんを応援したいです。

 私はクソなコンテンツやヤバいコンテンツに出会ってしまうと(よっぽどお金を払っている場合は除く)怒りや呆れよりも「どうしてこんなコンテンツを世の中に出してしまったんだろう」という疑問が先行していろいろ考え込むという癖があるのですが、「PとJK」において最も大きい理由はずばり「大人の事情」これ以上でも以下でもないと思います。

 もう◯◯を映画化しよう!とかそういうクリエイティブな話ではなくて、広告代理店とスポンサーありきの、「映画の中ではこれをしなければいけない」「誰を起用しなければいけない」「何を使わなければいけない」という制約だらけの映画です。最近量産されている胸キュン映画の中にこのような類型は多く見られるのかと思いますが、まさしく本作がその典型例でしょう。不自然に使われるドローン(多分、クレーンカメラでも良かったと思う)、エンドロールに躍る「藤島ジュリー景子」の文字、突然始まるブルーノ・マーズの曲にのせたフラッシュモブなどが挙げられます。「大人の事情」そのものを体現したような映画ですね。多分、亀梨くんの上司役に田口トモロヲを起用したのは絶対に大人の事情は絡んでいないと思いますが。 あと、玉城ティナちゃんは、「オオカミ少女―」では二階堂ふみ小島梨里杏/武田玲奈という美少女たちに囲まれてそれなりに馴染んでいたのですが、本作ではなかなか浮いています。すごい浮きっぷりです。なんだかティナちゃんの周りだけ世界が違う感じがします。

 「オオカミ少女と黒王子」が、本当はキョロ充なエリカが映画本編を通してキョロ充であることを受け入れる物語だったので比較的キョロ充的なオタクへの親和性が高かったのに対し、「PとJK」のカコは完全にウェイ充だったので、一部のオタクから土屋太鳳が激しく憎悪を集めているのも、こういうウェイなキャラが異様に似合ってしまう土屋太鳳だからこそなのかなと改めて納得しました。男女混合グループで仲良しというのもいかにもウェイです。

 

 冒頭で「PとJKはいたって真剣にやっているが本当に面白い」と書きましたが、特に前半がギャグとしてしっかり成立してしまっている要因は、緩急のつけ方に端を発しているのではないかと推定されます。 たとえば亀梨くんの両親へ結婚を報告するくだりなどに見られる「真剣なムードの中で登場人物が急におかしなことを言い出す」というような堅苦しいムードから緩いムードに持っていく緩急のつけ方は、完全にコントの手法です。真面目な場でおかしなことを言うボケに「なんでやねん」とツッコむというような状況はコントにおいてしばしば見られるものなので、例に挙げた結婚報告のシーンのように多少なりとも笑っていい感じのする場面であればまだいいのですが、その他のシーンでも脚本家が意図していないであろう形でそういう風に笑いを取ってしまうため、冷静に考えるとなかなかキツイものがあります。

 あと、あんまりこういうこと書くと怒られてしまいますが、終始警察賛美で話が進んでいくので、なんかキモいなぁと思いました。PとJK観に行って何言ってんだって感じですが、これを観た全国のジャニオタが思考停止した状態で警察ってすごい!という考え一辺倒になってしまうのは正直気持ち悪いです。全国上映の作品なんだからもうちょっと「土屋太鳳→亀梨くんへの好意」と「警察すごい」を切り分けて描こうという話にはならなかったのでしょうか。撮ってると感覚麻痺してきそうですが。前に有名なストーカー殺人事件の実録本を読んだことがあるので、なんだか警察官の仕事を一辺倒に賛美しているのがイヤでした……もうちょっと中立的な書き方できなかったのかな~。右巻きだなあ~。警察24時を見ているような気分になったのでバラエティと同レベルかよ!と思ってしまったけどきっとこれも脚本のせいなのかなあ。

 廣木監督の撮る画面には、異様に登場人物のアップを多用する、走るカットを多用する、風景描写が多い(つまり、極端な引きか極端な寄りかの二極化している)のですが、とにかく画面の綺麗さについては安定したものがあるので、画的な方向から見るとかなりおすすめできる映画です。

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