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舞台、俳優DD、サブカルかぶれ等

第1回 ノゾミ・桃子の明るい悩み相談室

 

登場人物

ノゾミ:推しがちゃらんぽらんなので、陰で文句を言っているオタク。でも、たまに真面目なところを見せるので、本当はいいやつだと3年間信じており、炎上することを恐れて生きている。

桃子:推しに貢ぎすぎた結果、10代で悟りを開き、色々なことがどうでもよくなってしまったオタク。舞台がつまらないと寝る。

 

明るい悩み相談室

ノゾミ:ぜぇ……はぁ……疲れた……

桃子:ノゾミちゃんどうしたの? へろへろの状態でジョナサンに入ってくるとシャブ抜けた薬中みたいだし何か西新宿のビル街をタクシーに乗る俳優見つけて全力疾走した人みたいになってるよ。

ノゾミ:先に答えを言うでないわ! ああもう、どうしてあいつらは毎度毎度タクシー乗るかなあ〜。

桃子:きっと稽古がやたら毎日早く終わるから飲むしかやることないんだよ。

ノゾミ:にしても歩けよ!

桃子:腹立つね。 ところでノゾミちゃん、今日もいろいろなオタクから質問が届いてるよ。

ノゾミ:ええ〜、また〜?

桃子:仕方ないよ、みんな鬱憤が溜まってるんだよ。早速読もう。

 

ノゾミさん、桃子さん、こんばんは。私は俳優オタなのですが、先日ジャニオタの友人の癪に触ってしまいました。私が推しに凸れなかった愚痴を言ったところ、友人は「私たちは暑い日も寒い日も待って一言しか発することを許されないのに文句言うな」と怒られてしまったのです。友人の機嫌をどうしたら取り戻せるでしょうか。

ノゾミ:この人は友達に弱味握られてるの?心の狭い友達だな。

桃子:ジャニオタって心が強いよね。私ならジャニオタの環境はつらい。

ノゾミ:上下関係に縛られて心が豊かになり得なさそう。

桃子:でも「応援してる人がジャニーズに所属してる」っていうのはブランドとして強いよ。俳優オタって生きててスイマセンみたいなところあるから。

ノゾミ:職場でジャニオタが固まって派閥作って永遠に仕切りの悪口言ってるの羨ましいなあって思うときはあるねえ〜。共通の話題があるっていうのはさ。

桃子:まあでもジャニオタの上下関係とかルールもたいがいだけど俳優オタも色欲にまみれてて心が貧しいよ。

ノゾミ:この人は友達の機嫌を取り戻したいならいかにジャニーズが偉いかをしゃべればいいと思うよ。実際ジャニーズは偉いよ。テレビにも出られるし大箱もおさえられるし。

桃子:俳優オタになる前は若手俳優のことテレビドラマの死体役だと思ってたけど実際は死体役でもテレビ出られれば御の字だよね。

ノゾミ:推しがそんなことになったら大騒ぎだよ。祝い花だよ~。

桃子:この人はそう言われたら「でもほぼ一般人ッスから~」って下手に出ときゃなんとかなるよ。

 

はじめまして。私の推しは好きな音楽を聞かれると「韓国とか」という曖昧な回答をするので特に理由もないのですがすごく腹立たしいです。この怒りはムダなのでしょうか。

ノゾミムダだね。

桃子:うん。

ノゾミ:あ~でもわかるわ、めちゃくちゃわかるわこれ、つらいわ、つらいよね。つらいわ~~~~。

桃子:ノゾミちゃんの推しはSY32の稽古着リュックにつめて変な色のキャップの上からでっかいbeatsのヘッドホンしていつも一張羅のライダースに下だるだるのパンツで稽古来るもんね

ノゾミ:こら! 的確に人の推しを表現して罵るな! 音楽と関係ないし!

桃子:でも推しが岡崎体育とか聴いてても微妙な気持ちになるしサブカルにふれすぎるのも気がかりだよね。

ノゾミ:それはサブカルじゃなくてただのコミックシンガーじゃないの?

桃子:アハハ。一応テクノらしいよ。 みんな忘れちゃいけないけど俳優ってけっこうDQNいるからね。

ノゾミ:オタクに接してるうちに心がDQN化していくんだよ。

桃子:そうかもね…。

ノゾミ:俳優の素を見てそいつがクラスメイトにいてめちゃくちゃ素行悪かったとしても好きかをよく考えてからお金使ったほうがいいと思う。

桃子:それでも好きだったらどうするの?

ノゾミそりゃしょうがないよ……。

 

こんにちは。いま推しが舞台をやっているのですが演出家がいい加減で腹が立ちます。家から稽古場までの距離をkm単位でツイートしたり、舞台が2時間あるのにBGMが3種類しかなかったり、割とインド人みたいな顔のキャストが病欠したときにハゲ散らかしたおじさんのアンサンブルを代役に立てたりします。私のチケット代から演出家の給料が出ているのかと思うと怒りがわいてきます。ノゾミさんと桃子さんはスタッフに怒りを覚えたことはありますか。

ノゾミ:この演出家めちゃくちゃ面白いね。生涯を舞台化したほうがいいよ。

桃子:ノゾミちゃんは推しに似てすぐいい加減なことを言うね。

ノゾミ:本題に入ると、スタッフには怒りを覚えっぱなしだよね。

桃子:まあそうだね。

ノゾミ:桃子は悟ってからあんまり怒ったりしないよね。

桃子もう何言ってもムダだからね

ノゾミ:別に演出家ってものすごくえらいわけじゃないよね、世間的に。そりゃその舞台の座組の中では絶対的な存在であり権力だからえらそうに思えてくるけど、親の七光りで演出家やって酷評されてるのにクソ舞台をコンスタントに量産して初演と再演がつまんないのに有名俳優起用した大作で全国ツアーまわったりするやつもいるからね。

桃子:ノゾミちゃんの恨みがうかがえるね。

ノゾミ深作欣二の息子チケット代かえしてくれねーかなー。

桃子:そりゃムリだよ。

ノゾミ:でもハゲ散らかしたおじさんのアンサンブルに関しては許してあげようよ。その人もたぶん好きでハゲてるわけじゃないし。

桃子:それは演劇業界じゃなくてハゲ業界の問題だね。

ノゾミ:Kステの第二章でも女子高生役の子が体調不良で出てこられなくなって末満健一が代役やってたし。

Kステ大千秋楽を観ました。 - 安西くんを愛でる

桃子:まあ、女子高生→39歳男性よりは理性ある判断かもね。

ノゾミ:ジャニーズ風に言うと、ショー・マスト・ゴー・オンなんだよ。

sasagimame.hatenablog.com

桃子:全然関係ないけど、ジャニーズの舞台ってなんで本人たちの設定とか本人たちの話が多いんだろうね。前にテレビ見てたら、マッチがドリームボーイズの宣伝してたんだけど、「俺の生涯の話をやります」って言ってて、衝撃を受けたことがある。そんなの永久機関と一緒だよね。自分で自分の話やるんだから話作らなくていいんだよ。ラクだね。

ノゾミ:ねえ、そんなことより舞台「Johnny's World」が狂気に満ちててめちゃめちゃウケる。

しかしこのあと、13月を探していた勝利くんがマクベスを殺して歴史を変えてしまったためプロデューサーは洪水に巻き込まれて死んでしまいます。プロデューサーを追った勝利たちは、宇宙へ旅立つことに…な、何を言ってるかわからねーと思うがそういう話なので勘弁してください。

宇宙で知った事実…勝利くんたちのせいで、あの美しかった地球が灰色の星になってしまったというのです!

ノゾミなーに言ってんだ。

桃子:話が破綻してても、演出家に腹が立ったりしないならいいんじゃないかな。

ノゾミ:それもそーだね。でも難しいのは、この舞台面白いなって作品を手がけた人でも原作ものをやると面白くなくて愚痴アカでめーちゃくちゃ叩かれてる演出家いるじゃん。扱いに困る。

桃子:シャトナーじゃない方の西田だね。

ノゾミ:「おまえは殺陣の手数しか自慢できねえのか」「上演時間守れ」みたいなね~。

桃子:まあ、上演時間は守ってほしい。

ノゾミ:めーちゃくちゃトイレ行きたくなるもん長いと。つらくない?もうおばあちゃんなのかもしれない。

桃子:3時間半の舞台のマチソワ通ってたとき劇場壊そうかと思った。

 

ノゾミさん桃子さんこんにちは。推しの共演者が頑張って稽古場の背景にモザイクをかけて写真を載せているのですが、他の出演者は別に何もしていないので無加工の写真は上がりまくっていて、結果的にその共演者の一人相撲と化しており、見ていてむなしいです。相談ではなくてすみません。

ノゾミ:いるいる~~~~~~~~~~~。

桃子:そういうやつのこと心の中で自意識過剰って呼んでる。

ノゾミ:ただの悪口だもう。

 

桃子:ノゾミちゃん、今日来てた質問はこれで終わりだよ。

ノゾミ:悪口で終わりかよ!

桃子:最初から基本的に悪口だったけどね。

ノゾミ:あーあ、あの女キャストに不運が降りかからねえかな~~~。

桃子:ノゾミちゃん、インスタグラム必死に遡ってどうしたの?

ノゾミ:舞台で共演するとインスタ使ってマウンティングしてくる女に呪いこめてる。

桃子:そんなんだからいつまで経っても町厨なんだよ。

ノゾミ:キィ~~~~!!!どうしてこいつは稽古場にすぐ手作り料理を持参するんだよ!!!

桃子:AKBグループの出身者は情緒の形成時期をオタクとの握手に全部捧げちゃったから周囲にいる男性へのアプローチの仕方にやや歪みがみられるんだよ、ノゾミちゃん。

ノゾミ:クソ俳優の厨なんかやめてやる~~~!! あっ、服屋の店員から連絡だ……

 

<質問お待ちしています。>

 

 

ガチ恋が推しを刺してしまうとき

知人ふたりと飲んだ。

おたく歴3年のわたしに対しておふたりはどちらも俳優を見続けて10年はあろうかというベテランだった。ガチ恋だったが、推しが売れ、心を病んで入院し、ガッツを辞めて茶の間になってしまったわたしは2人に六本木の鳥貴族で疲れた心をカウンセリングしてもらった。わたしはピーチウーロンをがばがば飲みながら頷いた。「いくら誰かに承認してもらっても、結局わたし自身がわたしを承認できなければ、永遠にわたしを許すことはできない」みたいなことを説いてもらい、非常に納得した。

帰りに新宿のファーストキッチンに寄って俳優のおたく3人で固まってフロートを食べながら真剣に小金井のストーカー刺傷事件について話した。某観覧会社から傍聴券とりのバイトの募集が出ていた。拘束時間30分で1000円。「でも当たっても券渡さなきゃいけないんでしょ」「それよりも自分で見たいよね」という話になり、2万出すから傍聴券を売ってくれないかと真剣に話した。まあ売ってくれないけど。

推しはあのニュースを見てどう思っただろうか?という話題になった。

他人事だったのか、それとも果たして刺された被害者を自分に置き換えて考えたのか。 そもそも加害者はどうして被害者を刺してしまったのか女3人日曜夜のファーストキッチンで真剣に考えた。 まず最初に、「2万の時計じゃ心は動かせねえよ」と誰かが言った。ま、そりゃそうだ。20万の時計ならまだわかるけど。懲役17年が加害者には求刑されているという。満期出所だと計算しても刑務所から出てきたときには45歳である。そのへんにいるアイドルオタのおっさんなんか全然45歳より上だから同じことしちゃうかもしれないじゃん。

「殺意があったとして、殺したならもう二度と見られないのに」とまた言った人がいた。でもわたしは「殺すことで永遠にしたかったのかもしれません」と、言った。サイコな考え方かもしれない。たぶん一般人にこういう感覚はあまりない。こういうときに引き合いに出すのは悪いような気がするがヤンデレという概念がある。アニメ「School Days」とかが有名だけど(もちろんなんの関係もありません)好意がねじれた余り相手を刺殺してしまうという例はそのようなパターンにおいてみられるものだが常識的に考えて通用するものではない。裁判員裁判で、一般人が裁いたときに、おたくの歪んだ思考ははたしてどこまで理解されるのか、と思った。じゃあおたくが裁いたらいいじゃないかという話になった。 ただそれでも決して罪は軽くならずたぶんむしろ重くなると思う。「わたしの方がもっとしんどい思いしとるわ!」と、なる気がする。

小金井ストーカー:「私をめちゃくちゃに」被害者意見陳述 - 毎日新聞

犯人がライブ会場に来て、「結婚してください」「じゃあ、友達になってください」としつこく言ってきた

おたくの「結婚して」「友達になって」は、冠詞につく「叶わないということはそりゃわかってるけどでも言わせて」を省略しているから許されるのであって、加害者のように本当に本気で周りが見えない人が言ってるとただのホラーなのだけれど、でもその反面おたく以外の人には冗談な人と本気な人の区別は、あまりつかないことがある。 おたくにもつかなかったりする。 そしておたく自身も周りが見えなくなるときがあって、ふと気づくとサイコになりかけるときがある。相手を想い過ぎるあまり自分の身体が変わり果ててしまう戸川純の「蛹化の女」 のようになっているときがある。そしてそういうときにそれを止めてくれるのは、他のおたくだったりする。誰かに吐き出すことで正気に戻れるときもある。

だから加害者にもガチ恋友達とかがいて、その友達にあのドロドロした気持ちを吐き出せたら少しは違ったのかな、とおたく女3人はファーストキッチンで言い合った。カウンセリングが必要だったのだ。

こういった犯人の姿は、ファンではなく完全にストーカーそのものでした。

ファンとストーカーの境目とはずばり相手の裁量によって決まるものである。ものすごい追っかけなのに推しもマネージャーもぱっぱらぱーで全てが許されている人もいればちょっと出待ちしただけなのにこの世の終わりのように嫌われてしまう人もいる。難しい。でも人の機嫌を伺うことができれば誰だってやり直しはきくし許されなかった存在が許されることもある。加害者はたぶん全てにおいてやり直しがきかない方に突っ走ってしまい最後に被害者を刺してしまった。何十ヶ所も呪いを込めて刺してしまった。どこで間違えたんだろう?

わたしの通ってきた分岐点を振り返ると遡って行った先に加害者との共通点がないとは言い切れないのである。

幸運にもわたしには入院して見舞いに来てくれる友人や退院して飲みに誘ってくれる知り合いがいたので、なんとか自分の中の「ガチ恋ちゃん」をなだめすかしながら生きている。

推しの舞台は昨日で千秋楽だった。推しをみてもそんなに苦しくなくなった胸の内に安心しつつ、わたしも前は推しに友達になってほしかったなあ、と思った。今は実を言うとそんなことないけれど。わたしに「あなたの友達」という称号はふさわしくない。これからは「冗談な人」を貫いていこう、と思う夜だった。

「風と木の詩」文庫版全10巻

なんで急にお耽美少女漫画なんか読んでるのかといいますと、そもそも唐突に舞台「パタリロ!」にはまり、原作を読み、「クックロビン音頭」の元ネタが萩尾望都先生だということを知り、その流れで入院中んじゃー暇なのでBLお耽美モノの名作と言われている「風と木の詩」読んでみるかってことになったのですが、実はわたし、そんなに腐女子じゃないんですね。

いや、それはまあ、小中時代に一大ムーブメントを巻き起こしていたナマモノジャンルに首突っ込んでいたり、二次元もちょっとかじったりしたことはありますけど、プロの腐女子のみなさんのように、腐女子をライフワークにし、BLを食糧にするまでには至らなかったわけです。だから黒羽麻璃央くんの出てた「宇田川町で待っててよ。」見てもそんなに琴線に来るものが無かったし。

という感じで読み始めた「風と木の詩」だけど、こりゃBLというより、大河だね、大河。この作品が1976年連載開始ってとこにまず私はぶったまげました。1976年って、あーた、YMOも結成されてませんで。矢野顕子の「JAPANESE GIRL」と同じ年でっせ。おー怖い。

主人公として対をなすふたり、ジルベールコクトーとセルジュ・バトゥールが学園で恋に落ちて、駆け落ちして色々あってジルベールは死ぬっつーのがこの話の本筋なんですけど、まあとにかくこんなんありかよって設定が盛りだくさんなんですよねコレ。しかもこんなんありかよって設定もその割によく考えると結構BLあるあるだったりするんだけどもしかして「風木」が元ネタだったりするの? そうなの? ねえねえそうなの?

ちなみに文庫版で読むと(私は知ってたからいいけど)第3巻のあとがきでわかぎえふ氏が思いっきりジルベールが死ぬということをネタバレしてます。えーんかい白泉社……。

 

絶世の美少年、金髪で華奢で美少女のような見た目を持つジルベールコクトーは学院内で無数の男たちと関係を持つ現代的に言うならクソビッチです。しかもその原因は大好きな叔父(実は父親なんだけど)に捨てられて全寮制の学園に入れられたからというメンヘラちゃんでもあります。最近話題のツイッターアカウント「暇な女子大生」みたいなヤツです。授業をサボりまくっていますが上級生と寝る代わりにレポートを貰っているので問題ありません。問題あるけど。

そしてジプシーの娼婦を母に持ち、子爵を父に持つが両親が亡くなったために学院にやってきたセルジュ・バトゥールはめーちゃくちゃいい奴です。とにかくいい奴。友達多いし。あとピアノ上手い。そんなセルジュが学院に転入してくるところから話は始まるんですが、なんやかんやあって2人はルームメイトになります。

ぐぎゃーー!! BLあるあるーー!!

ま、そりゃそーですね。そーしないと話が進まないわな、と思いつつも読み進めるとジルベールは相も変わらずいろんな男たちとヤりまくっています。学院長ともヤっています。見境なしかよ。でもそんなジルベールに偏見なく接するセルジュめちゃくちゃいい奴やんけ〜(涙)。徐々に徐々にジルベールはセルジュに心を開いていくんですけど、あるときジルベールは発狂します。休暇前、大好きな叔父のオーギュストから「ちょっと行けそうにねえわ、ごめん」という手紙が届いてこの上なく大発狂するのです。もうね、ちょっと引いた、読んでる側だけど。あーたいくらなんでもメンヘラすぎるっしょ。私に言われたかないだろうけど。

そしてジルベールはヤケクソになりいろんな男に「僕を好き放題にしてくれ」と投げやりになってヤられまくります。 ボダのメンヘラ見てるみたいで悲しいです。舞台が2010年代ならジルベールリスカとブロンの合わせ技でツイのメンヘラになってること間違いなしです。

で、なんでこんなことになっちゃったのおぉってことでジルベールとセルジュの生い立ちの物語が語られるんですが、ジルベールはもともとオーギュストが義姉と不倫して生まれた子供なんですね。しかもそのオーギュストも義兄の歪んだ性癖のためにコクトー家に引き取られて慰み者にされてきた過去アリ。家庭環境からしてもーダメダメです。そんなんなのでジルベールは親の愛情を知らずに育ち、そこに目をつけたスーパーサイコのオーギュストが自分の思うがままに育てようとするんですね。で、思うがままに育つんですけど。

でもある日髭もじゃでいかにもモブおじさんって感じの彫刻家・ボナールにレイプされてジルベールは9歳にして処女喪失してしまうのです。泣くジルベール。……9歳でっせアナタ。ボナールは「お前てっきりもうオーギュストにヤられてんのかと思った、初めてならもうちょっと優しくしたのに」とか言っています。許すまじモブおじさん。

しかしそれを知ったオーギュストも負けてはいません。マジギレしたオーギュストは案の定ジルベールを抱くのです。調教されたジルベールはオーギュストの愛に飢えるメンヘラちゃんに進化。順調に歪んだジルベールは、なんとある日家出して彫刻家モブおじさん・ボナールの家に行ってしまいます。どんな鬼畜行為を受けてしまうのか!?読者に戦慄が走りますが、ボナールは意外といい奴で、彫刻の弟子に嫉妬されたりしながらもわずかながら平和な時をジルベールは過ごしたのです。見直したよボナール。レイプ魔呼ばわりしてごめんな、ボナール。

しかしジルベールメンヘラちゃんなので、なんとオーギュストのことを思うあまり3階から飛び降り自殺未遂してしまいます。3階じゃ死ねんぞとのツッコミむなしく色々あってジルベールは結局サイコなオーギュストを選んでしまいました。彫刻おじさんにしときゃ良かったやん、旅行連れてってくれるって言ってたし。

でもそんなメンヘラときどき幸せな日々も長くは続きません。オーギュストの義兄夫婦が「ジルベール邪魔」と言ってきたのです。義兄夫婦には実の子供ができていました。そっちの子供に家を継がせたいから邪魔〜とのことで、何やら大人の話し合いが行われ、オーギュストによってジルベールは激しく嫌がりながらも学院に入れられてしまったのです……。

さて一方のセルジュですが、優秀な生徒だったオトンがパリで娼婦に一目惚れしてしまい、パトロンのおっさんの手元からオカンをさらってスイスの田舎に逃亡、そこで生まれたのがセルジュ、という、ジルベールに比べればややインパクトに欠ける生育歴だったりします。

でも両親共に亡くなってしまうと生活は一変。性格最悪な伯母が後見人になり、陰口を叩かれ続けながらもお屋敷で暮らしますが、あるとき仲良くしていた従姉妹の美少女にうっかり火傷を負わせてしまい、それを申し訳なく思ったという理由で学院に転入してきたのでした。

 

さて、相変わらず微妙に打ち解けてんだか打ち解けてないんだかって感じのジルベールとセルジュですが、サイコのオーギュストが2人の間を引っかき回します。わざとセルジュに近づいてジルベールを発狂させたり(めんどくせえ…)。ヤンデレサイコのオーギュストは、なんとセルジュを容赦なくレイプ。しかし!!セルジュはめーちゃくちゃいいやつなのでむしろジルベールがあんなにお前のことを想ってるのになんでそんなことするんだ!!な方向に怒りが向きます。いいぞセルジュ。いい加減オーギュストにも呆れたのか、好きな気持ちはあるもののジルベールは一旦オーギュストから離れることにしました。

この辺になるとセルジュはもう「俺、もしかしてジルベールのこと……好き……?」って感じなのでもーそのままくっついて平和になれよーって思うんですけどジルベールはやっぱりオーギュスト大好きなのでいちいちオーギュストのことで病んで発狂します。オーギュストが婚約すれば発狂し、かといってセルジュにいい感じの女の子がいても発狂し……。

セルジュは悩みに悩み抜いた末、とうとうジルベールと一線を越えました。おめでとう。

くっつくまでがなげーーーーーーんだわ。

しかし、幸せな日々はそう長くは続きません。オーギュスト(多額の寄付で学園を牛耳っています。花男かよ)は学園の総監督に命令して不良にセルジュをボコらせたりします。学園を巻き込んだ恋。これでこそ少女漫画です。スケールの大きい恋、好きですよ。

そして最終的には同性愛が学園中にバレ、学院長に責問されることになります。お前も1巻でジルベールとヤってただろぉぉぉぉというツッコミも虚しく、オーギュストが自ら学園にやってきてジルベールはもといたマルセイユの屋敷に連れ戻されることになってしまいました。セルジュのところにも伯母(社交界でのオーギュストの知り合いだったのです。運悪いね)からマジギレした手紙が届きます。悲観したジルベールはナイフでの自殺を図ろうとしますがまたもや失敗。メンヘラの極みです。

しかしセルジュはめーちゃくちゃいいやつなので、絶望的なときでも前向きに、駆け落ちのために密かに動き始めます。学園中からは密かにカンパが集まり、級友たちの協力、そして最後にはオーギュスト側にいたと思われた生徒総監のまさかの寝返りで2人はパリへの脱出に成功するのでした。

 

まあ、でもパリに移っても全てがうまくいくわけではありません。

娼館の屋根裏部屋に住んで最初にふたりが勤めたレストランではヤクザの客にジルベールが(多分)レイプされ、それでも何もしてくれない店にキレたセルジュは辞表を叩きつけてピアノ教師に転職。良い賃金をもらい、友達もできてそれなりに充実した日々を過ごしますが一方のジルベールは引きこもり状態に。人と会いたくないので宅配便にも出ないという末期患者の様相を呈します。相も変わらずメンヘラを発揮するジルベールは、飲まず食わずでこのまま朽ち果てたい、セルジュにも「仕事に行かないでほしい」と言い、さらにヤケクソで女の子とベッドインするなどまさに

しかもセルジュは男と同棲しているという理由でピアノ教師もクビになり、仕事を探しますが最初に働いていたレストランでの一件でヤクザを怒らせてしまったので仕事が見つかりません。もはや二人して病み始めたジルベールとセルジュは海へと逃避行。死かと思われたそのとき、なんと忘れかけていた彫刻モブおじさんことボナールが彼らを救います。

捨てる神あれば拾う神あり。でもお世話になるのは申し訳ないと出ていったセルジュを追って、ジルベールも元の家に戻ってしまうのでした。

ここまでくるともはやこれはどーみても共依存です。立派な共依存です。学生時代の親友・パスカルに「別れろ」と諭されても「僕がいないとジルベールは生きていけない」と突っぱねるセルジュ。お手本のような共依存です。しかもジルベールはセルジュが働いている間にヤクザに薬漬けにされて売春を強要されています。す、救えねえ〜。

結局最後には、ジルベールはオーギュストの幻影を見たまま馬車に轢かれて死んでしまうんですけど、読後感としては、私は死にたい死にたいと言っている側だけど、中島らもの説いたように死ぬというのはやはり卑怯だ、と思った。先に死ぬというのは逃げだ。

多分あのあとセルジュはパトリシアと結婚してときどきジルベールのことを引きずりながらもなんとか幸せに暮らすんだと思う。それでも若くして死んだジルベールは、思い出のままでいつまでも綺麗なままだ。その衝撃は何にも勝る。

ジルベールって若さと儚さの体現みたいな存在だと思うんです。だって大人になったジルベール想像できないもん。死ぬことが運命付けられてたみたいな存在感放ってるよなあ。

個人的に一番クソムカつくのはオーギュストですね。なんなんだあのサイコ。頭おかしいんじゃないのか!?漫画だから悪役が必要なのはわかるんだけどそれにしても胸くそ悪かった。そしてジルベールの帰る場所はオーギュストしかないというのもまたつらい。

メンヘラがヤク中になって結局死ぬというテンプレはここらへんの少女漫画から始まって「恋空」に引き継がれているのかなと不謹慎ながらも思ってしまった。……舞台化してほしいけどジルベールの人選にめーーちゃくちゃ悩む。あ、高杉真宙くんならいけるかもしれない……。そしたらセルジュは推しで。理由?いいやつだから……。