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舞台、俳優DD、サブカルかぶれ等

出待ち文化の終焉

 

 私が初めて出待ちをしたのは2015年のことだった。その頃は若手俳優オタクの間で今よりもっと出待ちは"流行って"いた。ちょうど前年である2014年にテニミュ2ndシーズンが終わり、2nd出待ちの「残党」とでも呼べばいいのだろうか、そういうオタクたちが色んな現場に散らばって幅を利かせていた。1人の俳優に何人も出待ちがいて、代わる代わる話しかけたりするのが当たり前だった。「村デビュー」という言葉が当時はまだあった。(界隈的には)超有名稽古場である新宿村スタジオで初めて出待ちすることを指す。「あいつは強ぶってるけど○○で初めて村デビューしてたような子だから」という風に使った。

 時は流れに流れ。2018年頃になると「最近あんまり出待ち流行ってないね」というような会話をオタクとすることが多くなった。全体の人数自体が減っていた。幅を利かせていた、テニミュ2ndだったり或いはD2だったりの「残党」がどんどんオタクを辞めていって現場からは人が消えつつあった。2.5次元の出待ち自体が衰退する、きっかけと言っては大袈裟になるが、一つのターニングポイント、あるいは象徴として挙げられそうなのはやはり「水江の出待ち辞めてください」というパワーフレーズをTwitterに投下した水江建太がエーステ・摂津万里役にキャスティングされたことだろうか。

水江建太 on Twitter: "応援してくれる皆様へ いつもありがとうございます。 一部の方ですがお願いがあります。 水江の出待ち辞めてください。 正直迷惑です。 会える機会が少なくても気持ちはしっかり受け取ります。 応えられるよう今後も精進します。 何卒宜しくお願い致します。"

 正直「水江の出待ち辞めてください」自体に対しては爆笑したとしか言いようがなかったのだが、2.5次元自体がここ数年出待ちを拒絶しつつある、というか数年前まで存在した、"なぜか出待ちしても許されている"グダグダの空気が消えつつあるようには感じていた。だが、そもそも出待ちが大量に野放しされていた今までがおかしかったのであって、こっちの方が正しいんだよなとは思っていた。

 コロナウイルスが流行した。出待ちはテレビのニュースでも取り上げられるほどの問題になった。(イケメン人狼アイドルがそもそも舞台の中でも限界地下という前提は置いておいて)今までオタクの中で叩かれるだけだった出待ちは世間からも叩かれるようになった。そして本当に誰も出待ちをしなくなった。出待ちがキャストに突撃したことが原因で公演が中止になればそもそも元も子もないので、ある程度までの出待ちは出待ちをやめた。そんなん関係ないという限界のオタクもいるだろうが知らん。

 もともと若手俳優における出待ち文化は死につつあり、コロナウイルスとは関係なく、5月にはSNSでの誹謗中傷に対する法的措置が話題になったことで、元々は出待ちの悪口を書く掲示板であったいわゆる「黒」が閉鎖された事実にもそれは顕著に現れていた。出待ち自体が減少したことで、昔ほど黒はその役割を果たさなくなっており、不要論が多く寄せられたことで結果的に黒は閉鎖された。

 この先出待ち文化がまた盛り上がることがあるのかはわからないが、少なくとも疫病による社会的距離を保った生活をやりましょうねというフレーズが叫ばれている限り、これまでのような横に寄っていって話しかけるスタイルの出待ちが昔のような盛況を取り戻すことはないだろう。出待ちがまた流行るとしたら、今度は宝塚のように(※詳しくない)遠巻きに眺めるスタイルとか、あるいは本当に話しかけずに見守るだけのストーカースタイルとかになるのかもしれない。なにはともあれいわゆる「町厨」は私の観測範囲内ではほとんど絶滅しましたよというお話だ。多分これでよかったんだと思う。