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#もえのシチュCD修行 その1<VANQUISH BROTHERS 第伍夜 ミツナリ>

 ブログにも何度か書いているが、アイドルオタクを辞めて以降の私は乙女ゲームをやり萌えに耽溺するだけの廃人生活を送っている。ついにはフォロワーにシチュエーションCDを勧められるようになってしまった。シチュエーションCDといえば、生前の祖母に「シチュエーションCD、辞めますか? 人間辞めますか?」と言われたあのシチュエーションCDである。シチュエーションCDを所持している者には国民年金の猶予申請がおりないし、生命保険にも加入できない。私は三次元男性に一切興奮しなくなってしまい、性別が性別なら勃起障害なのでもう手遅れだし、人間辞めてももう仕方がないな……と思い、このたびシチュエーションCDマスターの道を目指して修行に出ることにした。

 ちなみに私の好きな二次元の男のタイプは、「ショタ」「狂っており倫理観がない」「暴力を振るってくる」などです。この性癖のせいでRejet作品しか勧められない

 

VANQUISH BROTHERS 第伍夜 ミツナリ CV.野島健児

VANQUISH BROTHERS 第伍夜 ミツナリ CV.野島健児

 

  さて、このミツナリは聞き手に対して終始「クソムシ」呼ばわりをしてくるというクールな仕様であり、その上1トラック目でいきなりカレーを皿ごと割ってぶちまけ台無しにしてくる舌を引っ張って拷問してくるなど非常に良いバイブスがある。私は声優に全く詳しくない状態で二次元のオタクを続けているという奇特な人間であるので声のことは正直言ってよくわからないのだが(どうしてシチュCD修行を始めたの?)、ショタ枠で勧められた本作、ものすごくイメージ上のショタっぽい声が流れるかといえばそうでもない。しかし、「こういうショタがいる」という思い込みの世界に一旦ハマれば、もう「そういうショタがいる」という主観から脱出することができなくなり、要するにリアリティがあるということなのだと思う。しかしこの場合における「リアリティ」というのは一種の「無い話リアリティ」なので、本来の語義における「リアリティ」とは程遠いのだが……。

 ちなみに全編通して聞いても設定はよくわからず、多分兄弟間でヒロインを巡った争いが繰り広げられているし、多分ヒロインは親に売り飛ばされているということくらいしかわからない。かわいそう。

 本作を聞く上で重要なポイントは「自らが愛されていると思うな」、この一点に尽きる。「他の兄弟に奪われるのも癪だから」という動機でミツナリはこちらに執着してくるのだが、この正しい恋愛とは程遠い歪んだ代用可能な愛情を受け入れられるか、素直に受け入れられる者であれば本作を聞いて萌えられるのだが、世の中の人間はそうではないっぽいので人を選ぶ(当たり前)。

 本作のフェティシズムの構造は非常に複雑であり、ミツナリはヒロインを終始罵倒しながらもヒロインに暴力を振るうように迫る、そして暴力で興奮する、ヒロインはミツナリに怯えながら暴力を振るわされるという奇怪な成り立ちをしている。怖い。このサディズムマゾヒズムの複雑な絡まり合いが本作の主要な萌えどころであると思われるのだが、難易度が高いので恐らくシチュエーションCD中級者ぐらいの人から聴くべき作品なのだろうと思われる。なぜ1作目のレビューに本作を選んだのかわからなくなってきたし、若干後悔しています

 ヒロインに暴力を振るわせ、「お前ごときの人間が僕を喜ばせることができた」と語るミツナリは支配欲に溢れていながらも性的にはマゾヒストというだいぶ特殊な人種だと思われ、なんだか聴いているとものすごく生育環境が心配になってくる。萌えどころではない。

 恐らくミツナリが興奮しているのは「暴力を振るいたくない人間に無理やり暴力を振るわせている」という点なのだと思うが、不安定な情緒と時折登場する刃物のもとにその心理は曖昧に見え隠れするのみで解析には分量が足りない。というよりもヒロインに対する感情が代用可能なラブドール的性質のものであるような気がするし、被支配においた人間に暴力を振るわせるという特殊すぎる性癖がヒロイン以外にも適用されるのかは不明である、そんな不確定要素だらけの恋愛未満の暴力と性愛が繰り広げられる不完全で不安定な作品が本作である。あまりにもアンバランスな情緒展開は切なさを覚えるし、「これが"アオハル"か……」と私は誤ったアオハル観に辿り着くことになってしまった。絶対違う。

 私が個人的に一押しなのは抵抗の過程でミツナリの首を絞めてしまうシーンです。他にも「首を絞める/絞められる」展開のあるシチュエーションCDがありましたら私まで是非ご教示ください。よろしくお願い致します。