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舞台、俳優DD、サブカルかぶれ等

舞台「スーツの男たち」ー頭の中がカユいんだ

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観てきました。もーそろそろブログのカテゴリに「安西慎太郎」を開設すべきか悩んでいます。昨年8月の「喜びの歌」、10月の「幽霊」と同じシーエイティ制作でした。半年強で同じ制作の舞台に3本も出る安西くんはなにかの政治的策略に巻き込まれているんだとおもいます(テキトー)。でもそんだけ一個の制作に気に入られてるっていうのは羨ましいなあ…。

最近昼夜逆転してるのに何かうっかりマチネ取っちゃったからひーひー言いながら起きて顔の血色が死人みたいになってるのをみながら高円寺いきました。アトリエファンファーレ高円寺、キャパ80です。人生で入った中で一番小さい箱かもしれない…多分。ここがすごいよ!アトリエファンファーレ高円寺→ステージ横にトイレがある(入るのが何かこわい…)

https://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2017/men_in_suits/

時にユーモラスで、時に切ない、男たちの物語。 

 みなさん騙されてはいけません。 ユーモラスとゆー言葉に油断して、んー、愉快なマフィアたちのコメディ会話劇かな??ってかんじで観に行ったらホラーを見せられて「…………」ってなりました。暗い。鑑賞後の感想が暗さしかないです。

安西くんはけっこう知的でクールな殺し屋・マックス、章平くんはその相棒をつとめるお調子者でお喋りな殺し屋・ボビー、この二人芝居で基本的に話は展開していきます。ボビーがもうずーっと喋ってるしマイペースだしやかましいから霞むんだけど、なんか、マックスは危ない雰囲気をただよわせてるんですね。ボビーは結構、うわー割と人間として一緒にいるのめんどくさいわーってタイプで、具体的にいうと無人島にこいつとふたりで流れ着いたら真っ先に崖から蹴り飛ばしたいなーってタイプなんですけど、そういうボビーにもなんやかんやで付き合ってあげるマックス優しいな~って思ったら幼馴染でした。情かい!

マックスの、「なに考えてるのかよくわかんない」感じが圧倒的に伝わってくるのです。物語中ずーっと。ささいな掛け合いでボケとツッコミが成立して場内から笑いが上がるときがあってもずーっと何か不穏……それは雰囲気としか言いようがなかったけど……そしてボビーが何も考えていないというかノーテンキなので(上司に謝りにいく前にビール飲むの、社会人としてごみだな!)こいつは歩く死亡フラグなんじゃねと思ってしまった……。

結果として、マックスは形容してしまうとビョーキになってしまったので、嫌気がさし、平凡な生活に憧れるも、良くも悪くも忠犬たるボビーにざんこくな殺され方をされてしまうのですが、ボビーもまたびょーきになってしまうという、救いようのない終わり方だったのですね。多分これは無限ループものだなーと思ったら暗ーくなってしまった……。逆説的にいえばマックスも昔はボビーみたいな性格だったのかもしれないですね。考えると暗くなるけどね…ツイッターで検索したら「マックスとボビーを日替わりでやってほしい」とゆー意見があってそりゃ輪廻だなぁーと深く納得した。片方を殺すことでもう片方が新たな世界線へと踏み出す物語構造なのでそれは非常にあっていると思う。わたしの大好きな「TRUMP」が代表例ですけどお互いの死がつづくかぎり輪廻は閉じないんですね。

暗い暗いといってますけど話の構造としてはもーほぼ完璧でケチのつけどころがないんですよ。すごいいい脚本をすごいうまい俳優が演じてるからこれだけ感情がゆりうごかされるのだ…功罪だね。ロードムービー的構成のなかで地道に風呂敷を広げて最後に風呂敷をちゃんとたたむ…とゆーよりは風呂敷ごと炎上させるので鑑賞後の気持ちとしては結構きれいな気持ちなんです。まー、暗いけどね…。上演時間が1時間半で二人芝居なのでやや単調になるのではと初めは懸念していたのですがそんなことなかったです。とてもあっという間だった。

個人的には安西くんが寝るときに上着をぬぐのがツボでした。イケメンのスーツ姿、すばらしいねー。ボス(羽場裕一さん)もいいイケ感だったので、スーツがフェティッシュな人が観に行ってもいいんじゃないかなーと思います。気分の保証はできかねる!

あとは、話の途中でなんら関係ないシーンなのにBGMの旋律がマックのポテトが揚がる音と一緒とゆー演出家どうにかしろよ案件があるので、そこは小笑いです。しかもメロディーが徐々にオシャレになるせいで、ポテトがオシャレに揚がっていくのもどうにかしろよ案件です。この制作でそーいう感じのギャグ案件を見たのは初めてなのでちょっとずっこけ通り越して感動すらしました。

 

安西くん演じるマックスは、殺しのトラウマにさいなまれているのか、悲鳴がきこえて夜眠れないノイローゼ状態という、現代社会なら休職案件なビョーキなのですが、それが明かされるのはかなり終盤なのに、観客にかなりの説得力を与えているのは、ひとえに安西くんが「頭の中がカユい人」の演技がめちゃくちゃ上手いからだとおもうんですね。

昨年7月に観劇した「K -Lost Small World-」でも安西くん演じる伏見猿比古は父親の亡霊につきまとわれる(という他者に原因を発する妄想)せいで頭の中にいろいろ沸いてる人の役をやってるんですが、リアリティが、すごいね。「幽霊」でも本当にビョーキ(性病だけど…作品世界では死に至る病と認識していたので)の青年の役をやっているので、安西くんって何かずっと病みっぱなしだな~と思ってしまったのですが、それだけ上手いってことだよなあ、しゃーない。

今作のマックスしかり、「幽霊」のオスヴァルとか、ロスモワの猿比古とかに共通する、自らの思い込みが強固になってしまって具現化してにっちもさっちもいかない的状況に苦しむ安西くんの演技を、どう形容しようかと考えると、中島らもではないですが、「頭の中がカユい」という感じになるのです。

頭の中がカユいんだ (集英社文庫 (な23-21))

頭の中がカユいんだ (集英社文庫 (な23-21))

 

 ↑名作。みんな読もう。 結局最後にはマックスはボビーに殺されてしまい、そのうえ無慈悲にも腹パンされまくってしまうのですが、ボビーはマックスに対してもともと親愛の情を抱いていたはずであり、一緒に仕事をし、ボスの前で「いいやつ」とまで言い切っていたのに、そこまで容赦なくなれるというのは、マックスに死に際の恨み言を吐かれたからなのか、それとも人間本来の業とゆーやつなのか……すべては虚しいのです。例え話「ボーイスカウトのバッジ」が、ボビーの心にどれだけ根ざしていたのか、という話です。ボビーも最後にびょーきになってしまうのは、死体蹴りをするとこわいよーという、ある種の寓話的でもありましたが…。

テーマがそんなに難解じゃないし、演出も全く凝ってない、とゆーかほぼ何もひねってない分、なおさら人間の純粋なこわさが浮き彫りになり、フルパワーで観客の心にビョーキの疑似体験をくらわせてくれる音響もあわさってホラーになっているのですね。完成したホラーだと思います、本作。ホラーっていうのも、ゾンビやオカルトの、ある種不条理な恐怖感じゃなくて、すごくシンプルな、人間と人間の生み出してしまう恐怖感なので…。

ただこれはつらいなーと思ったのは、作品として完成度が高いのと通いやすいのってまた別の問題で、これはめちゃくちゃ通いづらいなーとおもいました。トラウマになっちゃうよ。わたしなら全通分チケットもってても土下座して制作に返して逃げるね。音響が本気だしてて観客みんながマックス状態におちいる…みんなビョーキになっちゃうしみんな不眠症になっちゃうよ…つらい。暗転もアトリエだから本気の暗転でブルーシアター(笑)の生ぬるい暗転しか最近みてなかったわたしはおびえました。ひーこわ。通いのみなさんは、体調をくずさない程度に通ってください…。何卒…。

充足感のある暗さを味わえるので、ひまな方はみなさんぜひ見に行ってください。いい演劇の感想はインターネットにかこう。4/2までやってるって……長いね!