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舞台、俳優DD、サブカルかぶれ等

ミュージカル「テニスの王子様」DreamLive2017/「楽曲派」はすでに敗北していた

 推しを一途に追い続けて3年、推しの仕事が落ち着いて、暇だな~!となった瞬間、反動でありえんDDになってしまい節操がなくなった女です。470人の読者の皆様、こんばんは(いつもありがとうございます)。

 この場で御礼を申し上げますが、開設2年にしてアクセスカウンターが100万PVを回っていました。本当にいつも読んでくださる方には感謝の念でいっぱいです。趣味ブログなのにここまで色々な方に拝読していただいているとなると少々というかだいぶ恐縮なのですが、これからも趣味について更新していきますので、何卒よろしくお願いします。

 

 例の事件(チケット詐欺に巻き込まれた)はちょっとバズったのでご存知の方もいらっしゃるかとは思うのですが、例の事件の相手の人はなんとテニスのおたくでした。そして「横アリのドリライいこ~」程度の約束をしていたのですが例の事件によって見事に没。というか連絡そのものが取れなくなってしまったので没。というわけで、askに下さった投稿にこう返信しました。

  こう投稿したところ、なんと有り難いことに「私とドリライ行ってください!」というメッセージを3名程度の方からいただきました。 テニスのおたく優しすぎて泣きました。ごめんな、町厨じゃないのに無意味に潰し合ってるとか言って。優しいテニスのおたくの皆さまの中から厳正なる選考によってチケットをお引き取りする方を決定し(一番最初に連絡くれた方と連絡取っただけだ!)なーんと千秋楽に行ってきました。

 俳優オタとして苦節4年目、初めてのミュージカル「テニスの王子様」観劇です。例の件がなければドリライには行っていなかったと思うので、物事は何しもめぐり合わせですね。

 テニミュはDVDでは結構見ているのですが、実際に観劇するのは初めてで、3rdシーズンに入ってからはその気になれば観劇できたのですが、ずっと観劇しなかったのは、正直、テニミュこえーみたいなところがあったからなんですね。テニミュ封建制度じゃん。21世紀になっても未だに封建制度やってる後宮って感じする。「◯代目」とかワケわかんねーしおたくも「俳優」じゃなくて「役」にあわせてスライドしていく文化が独特で怖いかんじするよ。

 とボソボソ言っていたのですが昨年ある日突然(本当に突然だったのでどういうきっかけか忘れてしまったのですが)2nd氷帝を見て、日吉と向日ペアが好きになりました。

 うっそじゃーん。

 ツイッターに書くとまずい案件な気がしてずっと言わないでいたみたいなところはあるのですが(しそんくんともイセダイとも喋ったことあるんだなあ~!!)(そろそろ忘れてるだろうけど、特急のときはしそんくんに顔バレしてたんだなあ!!)(それなのに今更テニスの話するなんて気まずい、しんじゃう)色々深みにはまりました。

 ご想像におまかせします。

 ちんっ

 補足すると私は「最初仲悪いけどだんだんお互いを認め合っていくコンビ」に遭遇するとマジかよってなってしまう傾向にあります(キョウリュウジャーの緑と黒など)。

 といっても「さすがに現実世界でまで氷帝にハマってしまったら人生が終わる感じがするぞ」という内なる警告により3rd氷帝は基本的にずっと回避を続けてきました。それに加えて、純粋に、俳優オタとして、テニスがわかんなかったんです。

 ペダルも薄ミュも行ったけどテニスだけは最後まで理解しようとしなかった。これは私が悪いけど、理解しようとしない、と同時に「テニミュ封建制度に取り込まれるのは嫌だ」と思っていたんです。テニミュのおたくって、究極の内輪ノリというか、「外の人に理解してもらう文脈なんて必要ない」みたいなところがあって、もちろん知り合いにはたくさんいるからそういう人たちは好きなのだけど、知らない人がテニミュ出身のおたくだと聞くと、なんとなく怖いなーというところがあった。

 まあ戦隊出身のわたしに言われたくないというやつですな。

 人生初テニミュはこういう経緯でドリライになりました。自分でも珍しいかなあと思います。キャストに対する予備知識が「三浦くんはバブみがある」程度の状態で横アリにたどり着き、自称・手塚国光の女(チケットありがとうございます)に引き連れられてセンターブロックに殴り込みをかけました。目の前にセンステがあったので「近いなあ~」と思ってしまいました。

 

 テニミュはチケット代が安いです。

 3時間半公演をしてクレーンや天井カメラやモニターなどを使用しても6500円です。これはZeppTokyoDiverCityワンマンにて「損益分岐点」を超えるために必死でがんばっている地下アイドル・里咲りさしゃちょーなどが聞いた場合には気絶も辞さない値段だと思います。あまりにも安すぎます。6500円なのでどうせ1時間半くらいで終わるだろと思って行ったら3時間半フルで歌われたときの気持ちを考えてみてください。

 ブロマイドも2枚で350円です。これは安い気がします。1枚あたりの換算にしてみると175円なのでジャニーズ公式生写真とあまり変わらないのですがそれにしても安いです。客からお金を取る気があるのでしょうか。

 チケットの高い2.5次元舞台(特にその中でも前列権や特典権が受けられる代わりに高額を支払う「プレミアムシート」方式を採用する舞台など)においてプレミアムな人たちにはいわゆる「選民感」が漂っているものなのですが(過疎舞台を除く)テニミュにはそれが全く存在しません。最前列から最後列まで等しくオタクです。これが良いことなのか悪いことなのか私には判断しかねます。「お金を積めばどうにかなる」が通用しないのはちょっと困りますが、中高生をターゲットにするには最善策のようにも思えます。

 さて、ミュージカル「テニスの王子様」は当然ながらミュージカルなので、音楽的な要素を比較的楽しみにして行ったのですが、この面について圧倒的な衝撃を受けたことをエントリに記載しておきたいと考えます。

 

realsound.jp

 たとえば、菊池成孔は「リアルサウンド」内における映画評論で大流行した映画「ラ・ラ・ランド」をこう切り捨てていました。

最初に喰らわされるワンパンチでうっとりしてしまい、後はボケーっと見ていると、エンディングに乱暴などんでん返しがあり、結果として「すごいもん見た」と思わせるのである。ハッタリの天才。というより、ある種の現代的な解離感覚が体質化しており、現代人にフィットするのだろう。

 要するに「ラ・ラ・ランドは冒頭と最後がすごいだけで実は大したことない映画」というdisりで、(菊池氏はその主張を徹底的にジャズの専門知識によって構成しているが)私もこれには同調します(しかしここまで手ひどくdisるつもりもない)。 「ミュージカル・テニスの王子様」に関しては、ドリームライブ2017を全編通して鑑賞した際にこのいわゆる「菊地成孔いわくラ・ラ・ランド大したことない説」を思い浮かべずにはいられませんでした。

 私のタイムラインのいわゆるテニミュのおたく的な人々によってドリライは絶賛され「楽しかった」というような感想が並んでおり、確かに私も楽しかったのですが、ちょっと待ってほしい、この「楽しかった」は全編を通して楽しかったのか?と考えると、それに対しては完璧にNOで、何によって楽しさがもたらされたかというと「構成力」によるものだと感じたのですね。

 オープニングとエンディングに、完膚なきまでのキラーチューン布陣を敷いておけば中盤でダラダラやってても微妙な曲を連発しても「ドリライは楽しい」という感想が上がってくる。これはdisではなく構成に対する「褒め」のスタンスであることをあくまでも読み手の方には了承していただきたいのですが、テニミュの音楽センス的なものについて真剣に考えてみると、最も頭のいい「ドリームライブ」に対する最終的解決方法はやっぱり構成力を高めて「エンディングでおたくのカタルシスを一挙に獲得してすごいもん見たと思わせる」ことだったのではと思ったのです。

 槍玉に上げるつもりはありませんが、六角中の部長・葵剣太郎によるソロ曲「女の子にモテたい(仮)」(曲名を調べる気も起きなかった)はどっちかというと歌詞を電気グルーヴがふざけて書いたんじゃないかというベクトルのしんどさがありました。音楽センスが死滅しすぎていて、「ふざけてるんじゃないか」と思ってしまうけど目の前で繰り広げられている光景は至って真剣なのであった。歌詞の内容を噛み砕けば小出祐介岡村靖幸に提供した曲「愛はおしゃれじゃない」の「モテたいぜ君にだけに いつもそればかり考えて」と全くもって対等な勝負をしているはずなのですがワードセンスの全てにおいてコケまくっていて葵剣太郎くんがなんだか可哀想でした。

 90年代の小室・ASAYAN的発想から未だに脱していないシンセの音、サビで入る謎の鉄琴的なメロディー、究極にダサいギターリフ(なんだかプログレが嫌いな人が書いた匂いがする)、そして内容が無さすぎて4分間の曲でストーリー1行しか進まない歌詞、これら「悪魔」の要素が揃うと恐らく「テニミュのダサい曲」は完成するのだろうということが3時間半で良く理解できました。しかしなぜか氷帝学園の曲だけは90年代シンセ・鉄琴・リフというほとんど全ての要素を回避しているので、制作側も本当は「悪魔の要素はヤバいんだ」ということは薄々感づいているはずです。ではなぜ辞められないのでしょうか。ネルケには優秀なお抱え作曲家さんがいらっしゃるではないですか(個人名を上げると特定age特定sageになってしまうので上げませんが)。さらに言えば「悪魔の要素」が揃っていてもストリングスが入るだけで奇跡のようにいい曲になるので、アレンジが素材をダメにしている良い例で、戦犯は編曲家であり作曲家は全く悪くないのかもしれません(全部同じ人がやってるならすみません)。「どーしてこのメロディーにしたよ」という曲は多々ありますが。

 しかしそれでも終盤のキラーチューン(曲を引用するのもこのブログを読まれている方にとっては笑止だと思いますのであえてしませんが)連発と「盛り上がり」による新興宗教テニミュ教的な効果には目を見張るものがあります。コンテンツの正しい延命させ方というのはこうであるべきなのかもしれません(むやみに抜本的改革を図ることをせず、できるだけ工夫によって場を繋ぐ)(田村ゆかりのアルバムを1枚でも聞いたことのある読者の方がいれば、是非クレジット欄に目を通して頂きたい。Wikipediaにも載っているけれど。彼女のアルバムはほとんど同じといってもいい制作陣によって楽曲が制作されており、特に「春待ちソレイユ」における松井五郎/太田雅友コンビの働きぶりには圧倒的なものがある(Wikipedia)。彼女はゆかり楽曲にあえて変化を求めず(もちろん彼女の意思ではなく周囲の大人たちの意思だった可能性もあるが)「ゆかり楽曲的であること」の範囲内での変化を模索し続けた。2013年以降オリジナルアルバムが出ていないのが惜しい)(田村ゆかりのライブも、どんなに中だるみしても最終的に「fancy baby doll」か「チェルシーガール」が歌われれば観客は納得する、といったようなところがあった)。

 正直、テニミュ楽曲に対する一括的な「全部同じに聞こえる」という感想が浮かんできてしまったのは表現力のなさの極地として反省するべきところなのですが、テニミュ楽曲が「テニミュ楽曲的」であろうとして上記のような延命方法をはかっているところには、逆説的に観客が「テニミュ楽曲的」なものを求めているからではないか、テニミュ楽曲が全く進化せずとも、キラーチューンで楽しくなれれば結局それでいいのではないか、という結論に至ってきます。

 結果として、私の観劇したドリームライブ2017千秋楽はスタンド席まで満員とはいかずともアリーナ席はほぼ全て埋めていたわけで、1万人前後の観客が「テニミュ楽曲」を支持しているとなると、要するに「楽曲派って存在してる意味あんの?」ということになってしまうわけです。

 アイドル現場において「アイドルの可愛さ」「接触対応」などではなく「楽曲の良さ」において推すグループを決めるオタを指してしばしば「楽曲派」と言いますが(これは通常の呼称としても文脈によっては蔑称としても使用される/そして彼らはしばしばサブカルと関連付けて語られる)、音楽的にセンスが壊滅していると感じたものでも「萌え」「イケメン」「エンタメ」によって横アリを埋めているとなると、もはやミュージカルやアイドルなどの文化において楽曲の良さなどどうでもよく、無意味という話になってきてしまいます。確かに(ドリライに比べれば)小規模キャパシティの公演においては音楽性などが取り沙汰されることもありますが、テニミュの完全に出来上がったナンセンスさの前には「もうちょっとメロディーラインを洗練させてほしい」みたいな意見は無力です。

 日本の若手俳優カルチャーにおける「楽曲派」は、ずっと前からテニミュの存在によって存在そのものが完全敗北していたのに、それに気づいていなかった、もしくは目をそらしていただけである、ということを認識し愕然としました。いくらよい楽曲をと要求しても一番売れてる舞台がこのような感じであれば前向きに動く意義は殆どと言っていいほどありません。「楽曲派」は「構成派」に転向し、舞台の楽曲よりも、舞台の構成を褒めるほうが報われるということです。

 色々書いてしまいましたが、音楽面に関する言及は以上になります。批難が来ることも覚悟の上でのエントリです。ただ個人的に「楽曲派はとっくの昔に死んでいたのにずっとそれに気づかなかった」ことに対する衝撃が大きすぎて、どうしてもエントリにせずにはいられませんでした。

 

 最後は前向きな話で〆ましょう。

 冒頭で言及したとおり3rd氷帝のことを認識してしまうのは怖いと漠然と感じていたのですが、どうやらその予感は当たっていたらしく、「日吉キャストか向日キャストに何かを感じてしまう気がする」という漫然とした恐怖も当たっていたらしく、客降りで向日岳人役の北乃颯希くんが目の前を通った瞬間からなぜか地蔵になってしまい、顔は全くストライクゾーンの範疇にないにも関わらずダンスを無限に見てしまうという大変な事態に陥って北乃くんにこれも"敗北"しました。 もともとジャニオタだったのでバシバシ踊る子が好きなのですが北乃くんは辞めジュらしいと終演後に知って「この星の運命か」と思いました。

 北乃くんはなんとなくパフォーマンスにステータスを全振りしている人間という感じがするので「命燃やしてる感」があって良かったです。このブログの読者の方に、北乃くんの欲しいもの、好きなブランド、行きつけのセレショなどをご存じの方がいらっしゃれば極力迅速にメールかメッセージを頂けますと筆者は精神的に落ち着くことだろうなと思います。

 日吉若役の内海くんが越前リョーマ a.k.a 阿久津仁愛と1対1で向き合っている光景には「詳しいことはわからないけど、これは"本物"だ」と思いました。

 「萌え」に対してカルチャー全般が敗北し続けているという論は以前「刀剣乱舞-花丸-」評においても書いたところですが(ネオ空気系アニメ「刀剣乱舞-花丸-」がすごい - I READ THE NEWS TODAY, OH BOY)結局は楽曲派といえども「まあ日岳ちゃんの試合があるから全国氷帝では最前列に座るしかないね」となってしまうところに私のような「自称良識派」の浅はかさが伺えるところです。 手塚の女と約束したので、次は立海戦です。幸村精市を見るぞ。