擬似恋愛と観察者化
めぐみ:これはそもそも今日の対談のきっかけになった、うちの教授が書いた論文なんですけど、「男性アイドルファンの擬似恋愛から観察者化」というテーマで。SMAPだったら例えばキムタクが一番アイドルとして人気があって、かっこよかったけれど嵐のファンは「二宮くんと相葉くんの関係性かわいい」って感じで擬似恋愛じゃなくなっているっていうテーマを書いているんですよね。(レジュメを出すめぐみさん)
めりい:それに反論しようとして、全力で擬似恋愛しようとしてる奴がこんなにもいるっていうのを示していきたいわけですよね。教授に。
めぐみ:それこそ、SMAPから嵐、疑似恋愛から観察者化っていうのは「やおい文化」から流れてきてるんじゃないかとこの論文の中で教授は推察しているんですけれど。
めりい:例えばその、握手会文化ってハロプロにはAKB48から輸入されてきたものじゃないですか。接触文化って最近まで女性アイドルにはなかったものだと思うんですよね。女性アイドルには接触文化が欠落してた。それこそ90年代までは。00年代からやっぱり「ガチ恋」「接触厨」という人種が登場し始めたんじゃないかと思うんです。
ふちりん:女性アイドルの場合は、むしろ観察者化から擬似恋愛に逆行していると思いますね。
めりい:女性アイドルの場合には主体化が進んでいるんだと私は思います。
めぐみ:私もこの論文を読んだときに、AKB商法とかで「会いにいける機会」がすごい増えてるし、SNSでもやりとりができるのになんで観察者化なんだろう?と思って。確かにジャニオタにはそういう人が増えたかもしれないけれど。
ふちりん:女性アイドルには逆に自分が参加していく形が増えていると思いますよね。
めりい:そうですよね。私が前にブログで「戦闘美少年の精神分析」という論文を書いたことがあるんですけれど、「戦闘美少女文化」ってあるじゃないですか。エヴァンゲリオンにしろ、たとえば――セカイ系っていうジャンルがあって、美少女が現れてダメな自分と一緒に世界を救う、自分と美少女の存在が世界の存亡を左右する、みたいな。でもその反面、戦闘美少年、たとえば戦隊ヒーローに代表されるような場合には「自分が介入する隙がない」から、自分自身を向こうに投影して憧れ、尊敬、感情移入がその本人に向いてしまうんですよね。戦闘美少女の場合、横にはきちんと主人公がいるのでそこに感情移入ができるんですけど、戦闘美少年の場合だと「世界を救ってくれる絶対的な存在」に没入しちゃうという現象が起こるんです。
めりい:「できなかったことをやってくれる推し」という存在に置き換えれば、これは若手俳優の追っかけにも同じことが言えると思うんですね。男性アイドルや若手俳優とは違って、女性アイドルの場合は接触文化によって「ファンとアイドル」=「1:1」というふれあいが確立されているじゃないですか。
ふちりん:そうですね。
めりい:でも例えばジャニオタって、オタクとファンの関係性は不安定なんですよね。「アイドル:大多数のかたまり(ファン)」でしかない。「ファンの皆さんのおかげで…」って言及することはあっても、AKB48のようにひとりひとりに対してありがとうって接しているわけじゃないですから。っていうことを多分以前にも自分のブログで言ったことがあるんですけど(笑)。
めぐみ:確かに、1:1になれる機会が少ないから。
めりい:投影、憧れをしてしまってそこで「ガチ恋」現象が対男性の場合には生じるのではないかと。女性アイドルの場合のガチ恋はやっぱり接触を経た上での「恋愛感情」じゃないですか。ふちりんさんの場合は最初のきっかけがコンサートだったから、梨華ちゃんに対する憧れとか、「自分のできなかったことを梨華ちゃんはできてすごいなあ」みたいなのとかはあったりするんですか?
ふちりん:そういうのは特にないですね。気づいたら本当にただ好きだったっていう。
めりい:なるほど。そういうのって女子特有のものなんですかね。
ふちりん:あと、僕の梨華ちゃんに対する気持ちの中には、色っぽい梨華ちゃんが好きという気持ちもあるので。
めりい:多分、そこはスイッチの違いなんですよね。私のスイッチって「エモーショナル」のスイッチなんですよ。エモいガチ恋をしてしまっている。整理すると面白いですね、この辺り。
めぐみ:いろいろなガチ恋がある。
めりい:わりとジャニオタのガチ恋なんかは「エモーショナルなガチ恋」が多いと思います。
ふちりん:性的な感情を持つ人はあまりいないと思いますね。
めりい:キラキラしたものに惹かれてしまう……だから電柱に集まる蛾と同じですけど(笑)。
めぐみ:例えが(笑)。
めりい:いや、私は蛾ですよ。間違いなく蛾です。
自分と推しとの関係性
めりい:論文から引用すると、『「俺たちつきあってるらしいよ」この告白のセリフこそが観察者化を代表するセリフである』って書いてありますけど、確かに外から見た自分と推しとの関係性って気になりますよね。
めぐみ:「俺たちつきあってるらしいよ」って傷つかない告白の方法なんですよね。断られたら「そうなんだ」で終われるし。リスクを減らすために言ってる言葉なんです。だからDDっていう文化も、ある意味ではリスクを減らしてるわけじゃないですか。
めりい:そういう点でガチ恋の人ってすごく強い存在だと思う、私は。
めぐみ:浮気とか不倫とか、自分の都合で好きな人を作ることによって家に帰って奥さんと嫌なことがあってももう一人の相手がいるから都合よく過ごせるっていう「観察者化」なんですよね。負担が軽くなってる、というか。
めりい:だからガチ恋って私はギャンブルだと思うんです。たとえばコインが100枚あったとして、DDの人は1から10のマスに10枚ずつコインを置いて、安全圏の中にいるわけですよ。でもガチ恋はひとつのマスに100枚のコインを置いて、ルーレット回して大損する(笑)。だから私はギャンブラーです。それは自覚あります、すごい。
ふちりん:その例え、上手いですね。
めりい:いやいや。ありがとうございます。
ふちりん:僕もそうかもしれない。
めりい:たとえば大宮アイドールとか、聖ジュリアーノ音楽院とかのマスにコインを1枚ぐらいずつ置いているけれど、って話ですよ(笑)。他にコインを賭けようとする努力をしなきゃいけない、っていうのがまずガチ恋の難点なんです。普通の人はがんばらなくても平等にコインを置けるけれど、ガチ恋はそこに努力を挟まないといけない。
めぐみ:私もいろんな人に話を聞いてきたんですけど、ジャニオタでジャニーズの現場がない間は俳優の現場に行っているって人がいて、その人に楽しいか?って聞くと秒で「楽しい!」って返ってくるんですよね。楽しくなきゃやってないって。
ふちりん:僕は今あんまり楽しくないです。
めぐみ:現場もなければ会いにもいけないですよね…。
めりい:だから麻薬と一緒ですね。やめたいけどやめられない。悪いことだとわかっていながらもやめられないので…。
ふちりん:イベントに行ったらつらい気持ちになるのをわかっているけれど、でも行っちゃうって感じですよね。
めりい:全然楽しみじゃない、現場も。来年の1月6日に推しの出るライブがあるんですけど、もう全然楽しみじゃないんですよ。
めぐみ:でも推しが出るから行く?
めりい:もうしょうがないから行くんですよ。行きたくないけど…。 そういえばこの論文に「男性の草食化現象」って書いてありますけど、ドルオタの人ってむしろ肉食の傾向が強くないですか?
ふちりん:肉食の人が多いイメージですね。
めぐみ:ドルオタって、メンバー同士の人が話してるのを見て楽しいって思うような層とライブで騒いで楽しいって思ってるような層のどっちが多いんですか?
ふちりん:どっちも被ってると思う。
めりい:だから、円がふたつ、こうあったら、こう……被ってる感じで。円が。
めぐみ:なるほどなるほど。
ふちりん:そういう人はまあ、健全なファンとしてやってますね。で、ガチ恋オタがこの辺(遠くを指差す)にいる。
めぐみ:あはは(笑)。
めりい:遠く離れた小島に、こう、隔離されて。江戸時代のオランダ人のように(笑)。でも確かに、この論文の中にも「ファンという言葉の中には狂信的な信奉者という意味合いもあり」って書いてありますけど、「ファン」という意味において正しくはありますよね。
めぐみ:ジャニオタってあんまり、「恋敵」みたいな感じだからファン同士で情報を共有したがらないんですよね。
めりい:本当に大事なことは推し被りには言いたくない。いろんなところで言ってる私と横浜くんの面白エピソードはまだ喋れるエピソード(笑)。
めぐみ:全然自担と関係ない人には話せるけど、自担が好きな人には話せない。自慢と取られるかもしれないし、そこでこじれるのも…。
ふちりん:最近ツイッターがあるから、ツイッターで変なこと書くとすぐ炎上するじゃないですか。だからみんな無難なことしか書かなくなってきてる感じはありますね。
めりい:だから男子と女子の違いで面白いなって思うのは、女子ってだいたい裏垢とかあるじゃないですか。
ふちりん:あるんだ。
めりい:やっぱりないんですか。
ふちりん:ない人が多いと思う。
めりい:女性声優のオタやってたときに、みんな無いって言うんですよ。ミルキィホームズとか好きだったんですけど、みんな無いって言うんですよね。愚痴とかあっても書いたりしないって。
めぐみ:愚痴とか本当に書きたいときはどうなるんですかね?
ふちりん:2ちゃんねるとかじゃないですかね。
めりい:そう、叩き合いがけっこうオープンなんですよね。だからそういうところを俳優オタもジャニオタも見習った方がいいと思う。
めぐみ:オタの中でマウンティングとかもあんまりないんですか?
ふちりん:まぁあんまりないかなー…。
めぐみ:握手券どれだけ買った、とかツイッターに書く人はいます?
ふちりん:でもみんな自己満足でやってる感じはあるので。
めりい:ハロプロ界隈だとそういう人は少ない印象がありますね。AKB界隈だと、あの、1000枚買いとかあるじゃないですか、こう、ばーって積んで。まとめ出しで握手会が止まるとか(笑)。聞くじゃないですか。それはやっぱりマウンティングですよね。
ふちりん:いや、そういう人でも謙虚な人が多いと思います。
めぐみ:それこそラブライバーとかカバンにつけてるグッズの数で競ったりとか。
めりい:でも女子に比べて男子は「純粋に楽しいからやってる」みたいな側面が大きいみたいですよ、実際に見てきた感じとしては。例えばふちりんさんが全身に梨華ちゃんの缶バッジをつけて現場に行っても、それは純粋に梨華ちゃんが好きだからやるわけじゃないですか。
ふちりん:はい。
めりい:梨華ちゃんの缶バッジの量を自慢したいっていうよりかは、愛を主張したいってなるじゃないですか。
ふちりん:そうなると思いますね。
めりい:女子は痛バッグの文化もそうだけど、ついてるグッズの価値とか量でマウンティングをしあうっていう。これだけ「推しにお金をかけてるのよ」っていう。
めぐみ:ジャニオタって、自担と1:1になれない分、承認欲求が他のファンに向かうんですよね。
ふちりん:あー、それはあるかもしれない。
めりい:そう、だから嵐がすごい流行ってたときに私は嵐ファンだったんですけど、嵐ファンって嵐に会えないんですよね。会えてもコンサートやってる年に1~2回とか、コンサートも激戦で入れないし、チケットも転売で高いし、「VS嵐」とかの観覧もすごい倍率だし、嵐に会えるのって年に数回なんですね。でも嵐ファンでいるために何をするかっていうと、嵐ファン同士で嵐の話して暇つぶすんですよね。それしかやることない。
ふちりん:女アイドルの場合は、握手会で握手するじゃないですか。その握手会で、「缶バッジすごいね」とか言ってもらえるから、そこで承認欲求が満たされて、別にオタ同士でマウンティングする必要はないんですよね。
めぐみ:確かにそうですよね。握手会って誰でも行けるし誰でも1:1になれる場が得られてるから、「俺も言われた」みたいになって。
めりい:平和におさまる。オタク同士での殴り合いとかが起きないんですよね。俳優オタクの場合は殴り合いとか警察沙汰とかあるんですよ。出待ちで警察沙汰とかは結構ある話らしくて。
ふちりん:えー。
めりい:例えばAちゃんが出待ちしてて、Bちゃんも喋りたいってときにBちゃんを喋らせてあげるためにBちゃんの友達がAちゃんを突き飛ばしたりとか。出待ちするしないで警察沙汰になったりとか、具体的な話として聞こえてくるんですよね。
めぐみ:ジャニオタもヤラカシとかはすごいから。
めりい:私の嵐ファンだったときの友達が櫻井くんの本気の追っかけだったんですけど、追っタクって言ってタクシーで追っかけするんですよ。自家用車持ってないんで。で、いつものように櫻井くんの車の追っタクをしてて、様子がおかしいなと思ったら車の入っていった先が警察署の駐車場の地下だったっていう(笑)そのまま引きずり出されて櫻井くんに被害届出されて、みたいな流れがあったらしくて。まあその元友達も今は更生して普通の人間やってるらしいんですけど。二宮くんのマンションの廊下に侵入してなぜかチーズケーキ食べたりとか(笑)
ふちりん:よく更生できましたね。
めりい:本当ですよね。
めぐみ:女性アイドルの現場で酔っ払って変なことする人とかいると思うんですけど、逆にこっちは現場外で変なことしてる(笑)。
めりい:女性アイドルだと、私のずっとフォローしてる元女性声優ファンで現地下アイドルファンの面白い人がいるんですけど。(※oimioさん)
その人は昔大坪由佳さんっていう声優さんのファンをしていて、「ショコラティアラ」ってソロ曲のときに頭からチョコレートケーキをかぶって退場になったという伝説をお持ちの方で。
ふちりん:チョコレートケーキを…?頭から…?
めりい:すごいですよね。
ふちりん:そういうヲタ芸なんですかね。
めりい:私はすごい好きだなと思っていて。その「ショコラティアラ芸」は賛否両論だったらしいですけど。その後も地下アイドルファンになってライブで幼児の格好したりオムツはいたり結構ぶっ飛んでる人で、そういう人を見ると楽しい気持ちになります。
ふちりん:ぶっ飛んでますね。
めぐみ:でも女子のオタクはね。
めりい:女子のオタクは現場ではおとなしいことが多いですね。
ふちりん:男の場合は、彼女ができると急にガチ恋がおさまるっていうのはよくありますけどね。
めりい:へえ~~~。でも俳優オタは、彼氏がいて同棲しててもやっぱりオタクはやめられない!みたいな例は多いですよ。積み上げてきたものが多いからですかね?
ふちりん:でも男のガチ恋でも、積み上げてきたものがすごい多くても彼女ができるとすぐ辞めちゃうってことがあるんですよ。
めぐみ:Xちゃん*1じゃん!
めりい:ああ!女の方でもそういう方いらっしゃいますね。とあるアイドルの人に1000万円使って、同じ舞台の最前列に10何回とか入ってメンバーの目の前で号泣して、他のメンバーに「どうしたの?」って心配されて推しに舞台上で「この子は頭がおかしいから」って説明されるような子がいたんですけど(笑)。でもその子も彼氏ができて就職したらぱたっと収まったんで。
めぐみ:いますごいちゃんとした職業に就いてて。
めりい:頑張ってるよね。
ふちりん:じゃあガチ恋も治る場合があるってことですね。
めぐみ:……でもやっぱり今もちょっと後遺症が(笑)
めりい:あああ(笑)その子もすごい人間的にぶっ飛んでる子なんで、今もぶっ飛んだことしてるんですけどね。(ブログには書けないです) ガチ恋っていうか、ガチ恋って歪んだ愛の形しか持てないんだと思うんですよ。もう……無理(笑)。
ふちりん:無理ですか。
めりい:無理だと思う(笑)
ふちりん:(めりいさんは)まだ若いから。大丈夫ですよ。
めぐみ:ちなみに、美人女医さん*2とはどんなお話をしているんですか?
ふちりん:やっぱり、他の女性に目を向けるようにと言われますね…。
めりい:でも私、お医者さんには説明しづらくてガチ恋のこと言ってないんですけど…。でもめっちゃ働いてることは言ってて。本当に無理しないでって毎回すごい言われるんですよ。どうしても夜働いてるんで昼夜逆転してて、不眠症なんですよね。……でもガチ恋を診察することになった美人女医さんの気持ちも気になります。病として診断していいものなのか?ってなりそうですよね。
ふちりん:ガチ恋そのものを診断するというより、症状を診断するというか。
めりい:つらさを抑えるみたいな。
ふちりん:PTSDみたいな感じになってるので。何かあるたびに熱愛報道のことを思い出したりとか…。そういうものを抑えるお薬を貰ったりしています。
めりい:私もメンタルヘルス的には、横浜くんのことを考えると調子が悪くなるというか、動悸が起こることがあるんですよ…。それを抑える薬を貰ったりとかはしています。
ふちりん:それは先生に言うんですか?
めりい:不安になるんですよ。いろんなことを考えると。家族のこととか、仕事のこととか。でも家族のことも仕事のことも全部結局は横浜くんに繋がっているんですよね。横浜くんのために家族と実家でうまくやっているし、横浜くんのために仕事しているし…って感じだし。それをうまくやるために、お薬は飲んでいます。あとは横浜くんのこと考えると眠れないです(笑)
めぐみ:病気じゃないですか!(笑)
めりい:えっ、だって横浜くんのこと考えると眠れなくなりませんか!?共感求めても、誰も共感してくれないか……。かっこいいなーって思うと神経が昂ってきちゃうので。病気ですね(笑)
今もキャバクラで働いてるんですけど、お客さんの前ではあくまでも明るく振る舞ってるつもりなんですけど時々何も言ってないのに「メンヘラでしょ」って言い当てられたりしてびっくりします。オーラ出てるのかな!?って。カラオケとかもおじさん相手だと無難にユーミンとか歌ってるんですけど、ちょっと若い人だと、椎名林檎とCoccoが好きって言うと「メンヘラでしょ!」って……(笑)
めぐみ:でもめりいさん本当に痩せましたよね。
めりい:そうなんですよね。神経系を抑える薬を飲んでるので食欲がなくて体重が落ちちゃうんですよ。去年の同じ時期から15kg減ってました。1日に1食か2食しかご飯が食べられなくて。 うーん……でも私も熱愛が出たらPTSDになってしまうと思います。ふちりんさんがよく仰っていることで興味深いのが、「野球*3というスポーツはこの世に存在しない」という(笑)。木の棒で白い球を遠くに飛ばすスポーツらしい、という(笑)。
ふちりん:そうですね。
めりい:だから私も、例えば横浜くんにモデルとの熱愛が発覚したらモデルという職業をこの世から抹消しようと思って。「この世にはどうやらそういう職業があるらしい」みたいな(笑)。
めぐみ:「いろいろな服を着て写真を撮られる職業がこの世にはあるらしい」という(笑)。
めりい:それごと抹消してしまいたいですね。
ふちりん:でもあまり抹消しすぎると社会に適応できなくなっちゃうから…。僕も料理もできなくなっちゃうし、何もできなくなっちゃうから、少しずつ社会に適応していかないといけない。
めりい:そうですよねー…。今もがんばって水商売やってるんですけど、どっちかといえば先輩たちとの人間関係のほうが接客よりも大変で。社会にただでさえ適応できてない……(笑)
総括
めぐみ:このきっかけになった教授もおじさんなんですけど、嵐のファンで。でも周りにガチ恋のファンがいないし、そういうのも知らないと。
ふちりん:まあ、ガチ恋なの隠してファンやってる人もいますからね。
めぐみ:ジャニオタだとガチ恋は迫害されたりします。
ふちりん:ハロプロでも、説教されたり怒られたりしますよ。現実を見ろとか、結婚なんてできないんだから諦めろとか。
めりい:いいじゃん!結婚するまではいいじゃないですか。
ふちりん:人生論みたいな。
めりい:あ、人生を心配されてるんだ。ふちりんさんの。
ふちりん:そういうことを言われますね。
めぐみ:ガチ恋に歯止めがかかればいいですけど、歯止めがかからない人が殺傷事件とか起こしたりしますからね。
めりい:5月に地下のアコースティックでやってる子が刺された事件あったじゃないですか。あのときちょっと、私に重なるものを感じて。新幹線で上京してきて、入り待ちを5時間してた、みたいな報道があのときあって。その体力すごいなと思うと同時に、ちょっとやっぱり「自分もそうなっちゃってたかもしれない」っていうところにシンパシーを感じちゃったんです。殺す側に。それで、ちょっと話が飛ぶんですけど。
ふちりん:はい。
めりい:この前「ドキュメント死刑囚」という、「月刊『創』」という雑誌の篠田博之編集長の執筆された本を読みまして。その中に、大阪の池田小殺傷事件の宅間守死刑囚のエピソードが出てくるんです。
宅間死刑囚に獄中結婚を申し出た支援者の女性がいたんですけど、その方って報道を見て、普通はあの事件って「自分が殺されてたかもしれない」「自分の子供が殺されてたかもしれない」って感情移入の仕方だと思うんですけど、その女性は「自分が宅間守になっていたかもしれない」って感情移入をして、拘置所と外界とで手紙のやりとりを重ねて獄中結婚したんですね。死刑囚って死刑が確定すると親族と元弁護士以外は基本的に面会ができなくなるので、恐らく面会のために獄中結婚したのではとも思うんですけど、宅間死刑囚はその獄中結婚で姓も改姓して宅間ではなくなってるんですよね。そして執行された。
ふちりん:そうなんだ。
めりい:そうなんですよ。自分も何かがおかしくなったら犯罪者になりかねないから、5月の事件を見て改めてちょっと考え込んじゃって。
ふちりん:その事件があったときに、僕のツイッターが軽く炎上したんですよ。
めりい:ええ!だいぶ前ですよね!
ふちりん:そう、だいぶ前なんですけど、「次はお前なんじゃないか」みたいなことを言われて。犯罪者予備軍扱いされる…。
めりい:それはひどいですね…。でも私も友達とかに、冗談ですけど「そのうち本当に殺さないでね」って言われますよ(笑)。熱愛が出たら横浜くんにボディーガードをつけられるかもしれないです。犯行動機は何でしたっけ?
めぐみ:時計とかを返されて。
めりい:なんか本とかを返送されて怒り狂ってたんですよね。そう考えると向こう側の「ガチ恋のあしらい方」も難しいですよね。アイドルは特に…。でも私の高校の友達にアイドル声優やってる子がいて、深夜アニメの主演もやったりしてるんですけど。結構イベントとかでステージに出ることも多かったらしくて。その、ファンの人は嬉しいけど、たまに客席でうるさい時があるからそれはやめてほしいって言ってました(笑)
ふちりん:そうなんですね。
めりい:でも「これからもずっと応援してます。◯◯ちゃんは悩むこともあると思うけど頑張って」って手紙を書いてきたファンが、あっさり数週間後に同じグループの別の子に推し変してたことがあるらしくて(笑)
ふちりん:ははは(笑)
めりい:友達はそれに怒り狂ってました。
ふちりん:同じグループで推し変するのは一番嫌われますからね。
めぐみ:小金井の事件の犯人も、周りにガチ恋仲間がいて、相談にできていたら事件は止められたかもしれないですよね。
ふちりん:そうですねー。
めりい:周りにガチ恋としての承認が得られていればもしかしたら事件は起きなかったかもしれないですよね。愛を綴ったはてなブログを書くとかして。そのエネルギーがあるなら。私のブログもただただ好きなこと書いてるだけなのに読者数が240くらい行ってて(笑)ものすごくびっくりするんですよ!
めぐみ:毎回読んでます。
ふちりん:僕も読みました。
めりい:ありがとうございます…。
めぐみ:ライターとかになった方がいいんじゃないかと思う。
めりい:いや、それすごい言われるんですけど、ライターって名乗れば誰でもなれるので(笑)。
めぐみ:横浜くんのファンやってる限りは固定の職業に就けそうにないですよね。
めりい:無理ですね。自称フリーライターってことで(笑)
めぐみ:たしかに。
めりい:フリーライターって自称したら誰でもなれるので。嶽本野ばらさんも著書で書かれていたんですけど、野ばらさんの時代は90年代だったけれどFAX1台と電話番号さえあれば誰でもライターにはなれるって仰ってたので。でも私の場合書けることがすごい限られてる(笑)すごい狭い。
めぐみ:確かに。それ言い出したら今携帯あれば誰でもアイドルになれますもんね。
めりい:いまミスiDとか誰でもに門扉開いてますからね。若手俳優もバーとかでバイトしてる*4時代だし。
ふちりん:流星くんはバーとかでバイトしてないんですか?
めりい:してないです*5。実家住まいだし……服はいつもあげてるし(笑)。
めぐみ:彼がキャバクラとか行ってない限り*6はかかるお金ないですよ。衣食住揃ってますから。困ってないです。めりいさん服とかすごいプレゼントしてるから。
ふちりん:服とかはサイズどうしてるんですか?
めりい:セレクトショップの担当さんが身長体重一緒なので、いつも着せ替え人形にしてます(笑)。
ふちりん:プレゼントするんですね。
めりい:俳優ファンはけっこう服とかプレゼントします。で、自撮りとかで使ってもらえてるのがわかると嬉しいみたいな。女性アイドルのファンはプレゼントする人がわりあい少ない印象があります。
ふちりん:女性の服を選ぶのは難しいから…。
めりい:たまに109のアンクルージュとかに行くとおじさんが深刻そうな顔で店員さんに相談してたりします。プレゼントなのかなっていう(笑)。石川さんには何か差し上げられたことはあるんですか?
ふちりん:基本的に手紙くらいかな…あとペットのおもちゃとか。
めりい:実用性がある!
ふちりん:でも届いてるかわからないから…。
めりい:いや大丈夫ですよ!届いてますよ!私もいつも届いてるの着用で確認してるから!
ふちりん:ハロプロはすごい届くの遅かったりするんですよね。届かなかったりとか。
めりい:そうなんですね…。
めぐみ:めりいさんは貢ぎですよね。
めりい:貢ぎですね。貢ぎ要員です。でもこの前「わたしのこと正直どう思ってんの?」って聞いたら、「いつも応援してくれるし来てくれるし服もくれるし……でも大丈夫なんですか?」って言われて(笑)。
ふちりん:お金の心配されてる。
めりい:そのとき私体調崩して前の仕事辞めた直後だったので、「いや!大丈夫じゃないよ!」って本人に言ったりとかして(笑)。そしたら「無理しないで!本当に体調に気をつけて!」ってすごい言われまして。
ふちりん:でも着てくれるのは嬉しいですね。
めりい:どれが私のだかもう覚えてないと思うけど(笑)あげすぎて。
あとがき
ふちりんさんは私のような人間にも、柔らかに、心優しく接してくださり、2時間ほどお話をしたけれどとてもあっというまの時間だったように感じる。ちなみに、この文字起こしには6時間を要した。……そっちのほうが長いんかい…。
話題はトイプードルから宅間守まで多岐におよんだが、ふちりんさんの広い見識で終始興味深く対談を進めることができた。改めてこの場でセッティングをしてくださっためぐみ氏に感謝したい。ありがとうございます。
ふちりんさんは石川さんが結婚したらチベットに行ってしまうそうだけれど、せめてツイッターで「よっぴらってる~」的な更新は続けてほしいと私は願っている。あと、願わくば大宮アイドールのカウンターでふちりんさんとお酒が飲みたい(20歳になったら)。だから来年まで、石川さん結婚しないで!(←身勝手)
3万字以上にも及んだ長い対談でしたが、ここまで読んでくださった方に謝意を心より示します。ありがとうございました。
ちなみに、最後に少しだけ書いておきますが、こんな私と対談してそれをブログに載せられたいという方、いつでも募集しています。是非お話してください。おいしいお茶を飲みながら、ガチ恋やオタクの話をしましょう。